朝からのひどい低気圧に負けてしまい、カーテンを開けるよりも早く会社に休みの電話を入れた。
朦朧とした意識の中で、パタパタと弾ける水の音を聞いた気がしたから、おそらく外は雨だったのだろう。
浅い夢の淵で頭痛を抱えて行ったり来たりしてるうちに、この時間になった。
寝ている間に部屋の空気を吸い尽くしてしまったような不快感が取れない。
たまらず窓を開けたところ、雨上がりの湿った空気に乗ってどこかからパン屋の匂いがした。
駅前の商店街までは距離があるが、きっとそこから漂ってきたんだろう。
ボロボロのテントに動きの悪い自動ドアがついていて、並んでるパンもどこか煤けた感じのする街のパン屋さん。
そんなパン屋さんでも毎日ちゃんとパンを焼いていて、こんな雨上がりの日は私の家まで匂いまで届けてくれるのだ。
そんなことを考えながらしばらく空気を入れ替えていると、幾分頭痛もマシになってきた気がする。
窓の外からは遠くの工事現場の重機の音と、餌を探してせわしなく鳴くスズメの声がする。パンの匂いもまだちゃんと届いている。
どんな形のパンを焼いているのだろう。