普段やたら海外の良さについて熱弁をふるっていたが、興味のない俺はテキトーに相槌を打っていた。
それがタイナイの琴線に触れたらしく、俺は半ば無理やり海外の良さを体験させられる羽目になった。
ウサクは、タイナイとは別ベクトルで“精力的”な人物であり、様々な国の政治に触れておくのも一興とついてきた。
「あえて下調べをしないことで、より体験を新鮮で特別なものにするのさ」
とはいえ、さすがに不安なので案内人を雇うあたり慣れている(と思われたいのだろう)。
「ようこそ。この国は“個人の意思”を尊重します。そのフレキシブルさ含めて、どうぞ観光を楽しんでください」
何はともあれアテもなく歩き出すと、早速タイナイが観光の独自理論を展開させる。
「基本的に観光が盛んな国というのは、海外向けに首都も最適化されているんだ。場合によっては地元の人が疎外感を覚えるほどにね」
こーいうのを悠々と語りたがる年頃なのだ。
「だけど個人的には大通りじゃなくて、小脇の道に寄ってその世界の情勢を側面的に見るのもオツなものだよ」
「なるほど、我もこの国の情勢をしかと体験してみたいしな。よし、ちょっと寄り道しよう」
そうして目に付いた小脇の道に入ろうとすると、案内人が止めてくる。
「いけない。巻き込まれるかもしれない」
不穏なことを言ってくる。
「なんだ。治安が悪いってことか?」
「いや、取り締りはしっかりやっていますが、大事になったときに巻き込まれる可能性がある」
「そーいうの含めて治安が悪いって言うと思うのだが」
「自由を尊重している国なので、まあ多少は。もちろん、どうしても行くと言うなら構いませんが……」
なんだか腑に落ちない理屈だったが、とにかく危険だということで俺たちは行くのをやめた。
俺たちが立ち寄ったのは大きめの雑貨屋だった。
「俺たちの国でも海外観光客が大型雑貨店で買い物するってことは多いだろ? その国の雰囲気を感じ取るのに実は最適なんだ」
別にもっと如何にもな場所を観光してもいいと思うのだが、どうもツウぶりたいらしい。
俺たちの国にもあるメーカーのものに、この国独自のブランド商品も共に並ぶ、何とも奇妙な様相を呈していた。
そして、ふと一際目立つ、異様なデザインのパッケージが目についた。
≪ 前 「ん? なんだこれは」 パッケージデザインを見ても、何の商品か分からない。 ウサクが気になって案内人に尋ねると、俺たちの考えているものとは違う意図で話を展開させて...
≪ 前 案内人の回答にウサクは困惑する。 理屈が伴っているように見えても、それには隔絶されたものがあるからだ。 ウサクが紅潮する。 火が付いたウサクは、そう簡単に止められ...
≪ 前 テーマ曲:「麻薬アブナイ」 歌:ウサク、マスダ、タイナイ 作詞・作曲:ウサク 麻薬アブナイぜ 体に良くない 色々あるし 医療とかで使うケースもある けど一般人は 気...