昨日さ、そろそろ古希を迎える叔父に「家のパソコンが壊れたみたいで全く使えない状態だから診に来てくれ」といわれて行ってみたら真剣に切なくなった。
叔父は、俺からみると亡父の弟なんだが、子のいない男やもめで、小さなアパートにバイトみたいな仕事の収入と年金と爺さんから相続した預金で一人暮らししている。
性格はなんて表現すればいいか悩むが、まあ極力よく言って「お人好し」で、若い頃から社会的に食い物にされるようなことが多く、身内はその尻拭いで相当(主に経済的な)迷惑を被ってきたらしい。
親父の生前は、親父が貯蓄用口座の通帳を預かり(叔父本人の合意あり)、定期的に生活費用の別口座に振替をしていた。本人の自由になる金があると危ないということらしい。
亡親からは自分ら兄弟姉妹に「資産管理を叔父本人に任せないよう」と申し送りされており、今は長女の姉がそれをやってる。
まあそんな人だ。
さて、パソコン復旧の話だが、電話ごしに症状を聞いても要領をえないのは過去の経験からわかりきっていたので、とにかく現場現物を本人の目の前で実演確認することから始めた。
まず電源は入るか。入る。
ここで叔父に質問。パソコンが使えないと言っているのは、何ができないのか→この画面の先に進めないとのこと。
とりあえずログインID、パスワードを訊き、入力。ログイン成功。
「できるじゃん」
「あれ?」
なんかよくわからん状況なので、一度電源を落として本人に実演させてみる。あー・・・。
「おじさん、テンキーはNumLockキーのランプ点いた状態じゃないと入力が効いてないよ。起動した直後はランプ消灯してるから、NumLockキー一度押してね」(という趣旨のことをかみ砕いて説明。後で備忘メモを作って渡した)
これで問題は解決かと一瞬思ったが、どうも状況が腑に落ちない。
そもそも今まで毎日使っていたはずなのに、なんで唐突にログインなどという超基本操作ができなくなったのか。
「これって、ログインできなくなったのいつ?」
「うーん、去年の夏くらいかなあ」
「ファッ!?」
イヤ確かに去年春の法事の以来メールした覚えないけど。それで日常に支障はないのか。
というか半年以上無駄に通信費払ってるわけだがそれでいいのか。
などとモヤモヤが頭を去来しつつログイン後の状態を確認したところ、問題の原因はすぐ判明した。
というのは、タッチパネル搭載機種でもないのにタブレットモードになっている。
はい、どうみてもWindows10への強制アップグレードです。本当にありがとうございました。
起動時のNumLock状態が変化したのもこの影響だろう。
これは果たして、叔父さんのロースキルぶりが悪いのか、Microsoftがクソなのか。まあ後者だな。
とりあえずデスクトップモードにしないと、ログインできたところで操作も覚束ないだろうから切り替え。
無線の設定もなぜか切れてる。当然認証情報など控えられていない。AOSS使うにもクライアントマネージャーのダウンロードが必要なので、とりあえずルータと有線接続。LANケーブル持ってきといてよかった。
これで一応ネットは復旧した。
次にメールはどうか。Windows10標準メーラには過去のメールが引き継がれているようだ。叔父さんが非標準メーラのユーザじゃなくてよかった。
あー、でも送受信ができない。面倒な。
「え?何それ」
部屋を小一時間漁ってそれらしき紙を発見。でもこれ、なんかメールアドレスとドメインが違う。そういえば去年変わったとか言ってたのを思い出す。
「これ多分以前のプロバイダだね。去年プロバイダ変えたとき書類一式渡されてると思うんだけど」
「うーん知らない。安くなるからと言われた」
・・・得体のしれない代理店から「消防署のほうから来ました」方式の営業かけられて、言われるがままに乗り換えしたんだろうなあ。じゃなきゃメールアドレス変えるような面倒なこと叔父さんはしない(そもそも発想がない)だろう。切ない。
仕方ないのでプロバイダに電話で問い合わせ。本人確認以外は全部自分がしゃべって情報収集完了。メールは復旧した。
というかその一つ前のプロバイダがあくどすぎる。叔父さんが200%利用しない月5000円くらいのVOD動画サービスに加入していやがった。
そりゃ普通の契約し直すだけで安くなるわ。まあ現プロバイダも、叔父さんが活用できるわけがない機器破損保証とリモートアクセスサポートのオプション計月1000円に加入させてやがったけどね。
叔父さんが勝手に書類無くした可能性も低くはないが、契約内容渡していない疑惑もあるしなあ。非常に微妙だ。
一応叔父さんに状況を説明して(おそらく理解はしていない)、同意の体をとった上でオプションは解約した。
後はプリンタの再設定だが、長期に動かさなかったせいでインクタンクが劣化し使えなくなってた。
時間的な制約もあり、半日やそこらでそこまでは面倒見切れないので、新しくプリンタ買いなおした方が安くて手っ取り早いとアドバイスだけして帰宅した。
お互いの家は電車で3時間近くかかるし、こちらも家庭持ちで暇じゃないので、次に面倒みれるのはまた数か月後だろう。
叔父さんはそれまでプリンタなしで過ごすだろうか。どっかの業者にカモられて変なプリンタを購入するだろうか。
パソコンに限らず、叔父さんの人生は一事が万事こんな調子だったのだろう。わかっていたことではあるが、改めてその人となりを実感すると親族として非常に辛い。
こういう状況に本人は不満も覚えず、疑問も感じずにいるというところが、なんか一番切ない。
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