「結婚することを『ゴールイン』みたいに表現することあるだろ?」
「あるね」
「でも、その後の生活もあるわけで、それをゴールと表現するのはどうかと思うわけ」
「じゃあ、ゴールはどこだ?」
「うーん……離婚?」
「結婚がゴールでないという以上、別の地点をゴールにしなければならない」
「いっそゴールなんてないと考えてもいいんじゃない」
「いや、人生が永遠に続くわけではない以上、確実にゴールは存在すると考えたほうがいい」
「うーん、となると、やっぱり死ぬことがゴールになるのかなあ」
「何か哲学的な感じになってきた」
「冷静に考えてみたんだが。ゴールをどう解釈するかがキモなんじゃないか」
「例えばゴールは無数にあるとか?」
「そう。現実の陸上競技だって、一つのレースだけ出て、そこでゴールしたら他のレースには出れないってわけじゃない」
「つまり『結婚するというレース』と考えるなら、そこをゴールに定めることは間違いではないかもしれない?」
「それだ。仮にそのレースにゴールしても、その他のレースには出場できるし、しなくても別のレースに出場できる」
「数多あるレースを『人生』で一括りにして、ゴールを一つにするから齟齬をきたしていたのかあ」
「けど、結婚することをゴールと定めてもいいとして、それはそれで新たな問題が」
「ああ、スタートをどこにするかだ」