健康診断で血液検査をした。
苦手だけれど仕方ないので腹をくくって左腕を差しだす。
顔を背けて、目をつむる。針が刺さる。
意外と大丈夫、すぐ終わる、と念じていると、
「コプ」
と、吸い上げられた血液がケースに移る音がした。
その瞬間、体中の力がみるみる抜けて力なく眉間にしわが寄り、
後輩の指導がなんでうまくできないんだろうとか毎晩仕事で
帰りの遅い夫が早死にしてしまったらどうしようとか、
生活の中のふとした心配事が心の中でぐんぐん増幅し、
やるせなさや物悲しさや切なさが一気に押し寄せ、涙が出た。
急にスイッチを押されたような、落とし穴に落ちたような、
ものすごく不思議な感覚だったんだけどいったい何だったんだろう?
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