http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/092300445/
この件については電通に同情する余地はなく、徹底的に膿を洗い出して欲しいと思う。
ただし「広告代理店は不正を働くものだからもっとノルマや監視を厳しくしてコストを下げてやれ」という方向に流れがいくことが個人的には一番怖い。この件は電通の組織的な問題だけではなく、広告業界全体の問題、ひいては企業の広報担当者やメディア関係者含む、広告に携わる全ての組織と人間が関係する問題だと思うから。
知らない人多いと思うけど、電通は日本のデジタル広告を扱う代理店の中では最も先進的な取り組みをやっていて規模も大きく、ここ最近M&A含めかなり強引にデジタル化を進めて、テレビ一辺倒の収益体制からの脱却を図ろうとしていた。
誓っていうけどおれは別に電通の回し者でもなんでもないし、つい先日まで広告代理店でデジタル広告をやっていた。もう辞めたけど。後で書くけどデジタル広告業界は漆黒なほどブラックな業界だ。これを業界全体が改善するきっかけになったらいいと思ってるけど、さらに悪い方向に進む可能性もあると危機感を持っている。こうやってる今も死にそうな顔で仕事をしてるかつての同僚がいるに違いないし。
まず今回の問題を乱暴に一言で言ってしまうと「日本の広告業界のデジタル広告の未成熟さ」に尽きると思う。
何が未成熟かというと色々あるが、中本副社長も言っている通り「組織の管理体制」「恒常的な人不足」がまず大きい。元も子もない話だけど、「発注する側も受注する側も、デジタル広告についてあまり分かってない」ので。
広告代理店は「代理店」なので、発注者が面倒臭い、できればやりたくないことを代理でやることでお金を頂戴している。広告戦略の策定・具体プランの提案・運用・レポート・反省点と次に生かすべきポイントを報告、などなど。会社にもよるし人にもよるからこれが全部じゃないけど、基本的に企業の広報担当は代理店からの提案を受けて、確認をし、問題があれば改善指示を出し、よければ社内決裁を通すだけの場合が多い。この社内決裁がまた面倒だし、最近は定時もうるさいので発注者側はデジタル広告について勉強しない。そもそもあまり興味がある人もいないかもしれない。それでもデジタル広告は国産/海外産含め新しいテクノロジーや広告メニューが毎日のように発表されるし、それを活用した新たな事例や手法がどんどん登場する。代理店の担当者はこれらを常にチェックして、発注者のためになるプランとメニューを作り、適切に受けた発注の運用を行なっていかなくていけない。
ただしこれができる代理店の人間は、もう本当にほんとーーに少ない。代理店の人間の大部分は、細かい数字ばっか追っていくような仕事をそもそもやりたがらない。でもニーズはめちゃくちゃある。だから発注を受けたら子会社やグループ会社の人間に丸投げすることになる。
そして子会社やグループ会社の人間は、残念ながら優秀な人間は少なく、大きな戦略を作ったりすることはおろか、与えられた目の前のタスクもボロボロこぼしていく有様だったりする。そりゃそうだ、給料低いんだもん。経験の少ない若者か、経験はあっても能力の低い人しか雇えない。
代理店はその中でも比較的マシな人間を代理店に出向させて名刺をもたせて権限を与えてデジタル広告担当として業務を押し付ける。そこで成長してバリバリこなす人もいるけど、たいていは津波のように押し寄せる業務に呆然となってしまう。日付の確認ミス・金額の記入間違い・指示を勘違いして間違った発注をする、間違ったバナーを掲出する等々、細かいミスやケアレスが多発していく。呆然となりながら業務をしているとミスをしたことすら気づかず、次々とやってくる業務をちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返す。受注を取ってくる営業がそんな細かい運用の話をわかるはずもなく、売り上げのことだけを考えて、ミスが含まれたレポートや請求書を、分からないまま得意先に報告することになってしまう。
デジタル広告の運用結果は数字に表れるから、得意先は代理店から報告された数字を見ながら、提案されたプランの中で、予算に合っているメニューを選んでいくんだけど、その数字には「どれだけの人間が稼働して作ったものか」が一切現れない。デジタル広告担当は毎日朝帰り、休日出勤当たり前が恒常化している。体を壊して休職する者も多い。
広告代理店は発注者の「これやりたい!」を何とかして叶えてやることで食っている商売だから、それは組織としてやりたいを叶える体制を作らないといけないんだけど、管理職のオヤジどもはデジタル広告の現場で何が行われているかわからず、かつて自分達がテレビコマーシャルの受注を取ってきたようにイケイケドンドンで売り上げを伸ばそうとして無茶なノルマを現場に課すことになる。
現在広報部長や宣伝部長を務める人も同様で、何となくデジタルが重要だということは知ってるけど、具体的にどういうことなのか全く分かっておらず、面倒臭いことは嫌だから細かい数字の話は避けて、「とにかく最先端でかっこいいことをやって目立って話題にしてほしい」と言う。そもそも得意先の言う「やりたい!」がどう考えても達成出来ない無茶苦茶な要求である場合も多いのだ。
これは広告業界に蔓延する悪癖のようなもので、特に電通は「いまの広告の最先端はこれですよ!?え、あなたの会社はまだですか?遅れてる!」といって発注主も代理店も煽って焚きつけて商売にしようとしてる。電通報とかその権化のようなサイトだ。
そもそもデジタル広告をまともにできる人間が全然育ってないのに、業界全体で「デジタルだデジタルだ」と掛け声だけは威勢が良く、組織的なサポートもほとんどなく小会社やグループ会社、下請けに丸ぶりし、一部の責任感の強い担当者が過労で疲弊する中でミスが起こり、ミスに気づかず間違いのまま発注主に報告や請求が行く。
広告のデジタル化は避けては通れず、今後も需要は高まっていくのは間違いなく、今は完全に個人が人力で回しているのをいかにして組織的に回していけるようにするかが課題だ。
一番の問題は発注者側も、代理店側も、「デジタルはやらないといけないのは分かってるけど、面倒臭いことはやりたくない」というマインドであることだ。
電通の不正を追及するのは最もだけど、本質はそこではなく、業界に携わる人間全員が腹をくくってデジタル広告を正面から取り組むこと、そしてそのための組織的なサポート体制を作ることだと思う。
なんとも既視感のある話題。 最近どこの業界でも金は出さないけど現場の精神論でなんとかしろってのばっかり。
広告業界全体って電通と博報堂が支配してるんじゃないの?
ネット代理店の中の人として補足。 ・電通はデジタル広告を扱う代理店の中では最も先進的な取り組みをやっている これは一面が正しくて、一面が間違っている。 まず、いわゆる現在...
ネット広告の本当の姿がもっと明らかになって、正しい形で使われて欲しい。今回の問題の皆さんの反応を見ていて、もっと補足したほうがいいと思い、また増田を借ります。 http://anond...
http://anond.hatelabo.jp/20160925202444 クライアント側の人間だけど、こういう問題があるはずなのになんで世の中であまり話が出てこないのかとは思ってた。 うちはECサイトなんで、CVがはっき...
http://anond.hatelabo.jp/20160925202444 クライアント側の人間だけど、こういう問題があるはずなのになんで世の中であまり話が出てこないのかとは思ってた。 うちはECサイトなんで、CVがはっき...
元中の人として、本件は構造問題と言われているのでその辺の整理をしようと思う。他の人と重複してるところは許してね。 ・現場の実情 ミスは多い。めっちゃ多い。記事に書かれて...
電通の不正があった。私もネット系のいわゆる広告代理店で働く中の人なので、全く他人事ではない。 私は、今回の電通のトヨタ事件とそれにまつわるいくつかの記事を読んで本当に心...
広告業界の人ってさすがにわかりやすい文章書くね
これを書いた元増田です。 電通の不正請求は広告業界全体の問題 http://anond.hatelabo.jp/20160924144051 これを書いた後、電通の過労自殺事件があり、電通の組織や体質の問題が社会的に批判...
いや、本当にその通りだと思いますね。 電通だけでなく、クライアントにも課題があるということは言えると思います。 1人が複数の案件を抱えているのであれば、それは電通側の社...
やはりひずみが表面化してきている 代理店系プロダクションで 超過剰勤務の末の自殺者がでてきてるが、そこはオープンにされないらしい。