2016-08-02

トヨタN次請け勤務の俺がトヨタカンバン方式とその周辺もろもろの諸問題説明しよう。

トヨタカンバン方式というと、JustInTimeとか物流効率化だとか先進的な言葉が並ぶがトヨタN次請け(N > 1)勤務の俺が説明しよう。

トヨタカンバン方式とは:

1.カンバン(品番が書かれた札)が仕入先に配られる(昔は運転手が納入した際に次の日のカンバンを貰ったそうだが、今は電子的にカンバンを発行する)

2.カンバンの枚数分だけパレット・容器(単位量がある)にカンバンを刺して納入する。基本カンバンが発行された次の日である

 例)品番XXXのカンバン5枚 = 5×パレットごとの運搬数

え、前の日に納入数が決まるの?と思った貴方貴方は真っ当な感覚の持ち主である


カンバン数だけ納入するというのは絶対である(急ぎとて特急料金などない。多い日は4回くらいトラックで走る)。

欠品や不良を連続して出そうものなら、得意先の品質保証会議などでつるし上げられ、自己批判をさせられ、大名行列のように仕入先に視察に来る。

改善なき場合は競合の仕入先に切り替えられる。

ほぼ笑い話だが、2次請け以下がトヨタの手入れを受ける際、1次などが事前にほころびを正しにくる。

しかも単価が非常に安い。部品にもよるだろうが利益10円以下の世界である

これは元請けにとっては非常に都合のいいことである。資材を調達したり、在庫を抱える必要がない。

下請けコストダウンに奔走してくれる。

さて、トヨタとて欠品が出るのは困るので、「内示数」なるものを出す。

これは生産計画で「月にこのくらい出るよ、準備しといてね」というものだ。

むろん見込み数なのでは元請けの都合で変更される。

今年ニュースになった工場爆発や地震などでラインが止まった場合、大量の部材を下請けが持つことになる。

金属製品などは錆が出てオシャカになるので、かなりの損害が出る。

また、従業員派遣社員への休業補償などもしなければならないが、もちろん本丸から保障などない。

せいぜい「低金利で貸し付けるよ」とか「手形を早めに換金してあげるよ」程度である

(実際今年「新型プリウスが出るから用意しとけよ」と内示があったが、2回のライン停止で大幅な生産減となった。

その時に下請け救済案として出されたのが上述である。)

さらに、毎年値下げ協力金なるものがある。これは協力とは言いつつ仕入先間の競合があるので強制力がある。

これがトヨタカンバン方式である

  • 補足

トヨタの一次請けはトヨタの子会社トヨタ主要株主なので本丸と大体同じである

トヨタおよび一次の生産技術品質管理は上に下に膨大な量のエクセルパワポ資料を作りまくるのが仕事

 恐らくSE以上にエクセル方眼紙パワポ芸の達人。

 「ぼくのかんがえたさいきょうのせいさんけいかく」を(紙の上で)実現すべく奮闘している。

 「受注数=生産数というキレイ生産計画以外存在しない!」ものとしている。

タスク管理カンバンなどは全くの勘違いであるトヨタカンバン方式とはきわめてウォーターフォール的な仕組みなのである

・もちろん下請けにもそれなりにメリットはある。

 というか定常的に大量の受注が見込めるのはありがたい(ただし利益率は相当に低い)。

 また少品種多量なので金型替えなどのオーバーヘッドが割りと低い(手広くやろうとするとここが問題となる)。

 世界に誇るトップメーカーのものづくりを担当しているというやりがい品質がよければ表彰されたりする。

・とはいえ2次以下はトヨタ以外の仕事も請け負って活路を見出そうとしないと飼い殺しのまま果てることになる。

 作れば売れた時代はとうに過ぎ、先細りは確実なので今が大きな転換点といえるかもしれない。

 ちょうど2代目、3代目の若社長世代交代の時期なので。

 ちなみに下請け下野する際にはトヨタや1次にどの役職で在籍してたかステータスとなる。

 大抵はこの過程を経て家業を継ぐ。

トヨタ以外の自動車産業現在は大抵かんばん方式である

・なんだかんだトヨタが儲かっていれば愛知県は安泰だと思う。

・いろいろな点で江戸幕府運営方法に近い。徳川出身の地だけある。

・「ほとんどいじめ」という意見があるが、トヨタ原理主義の結果だと思っている(苦しいことには変わりないが)。

【追記】

労働問題を指摘する方がいるがその通り。

過酷現場なので(トヨタ本丸ラインでもブーイングが出る位だから下請けさらに厳しい)人が集まらない。定着率が悪い。

経団連移民政策を支持するのはこの点である

昔はブラジル人労働者ががんばってくれたが、労働者の間にリーマンショック以後給与待遇全然向上しないこと(逆に最近生活費の高騰)に苛立ちが募っている。

労働組合に加入・争議に発展するケースも増加(労働組合もでかいところよりも2次以下の中小を狙ったほうが効くのでターゲットにしてくる)。

そして当然ながらこれは下請け責任でもって処理しなければならない。

【追記2】

今年に入って倒産廃業夜逃げがかなり増えている。

単価は上がらないが、品質要求だけは厳しくなっているので工数的にも人員的にも難しい。

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