街の本屋さんで、本を買った帰りでした。
まわりはうす暗く、おおきな建物が並んでいるのが、ぼんやり見えます。
いつもとおっている道なのに、なんだかはじめての道のようでした。
ごおおおおおおっ
とつぜん、すごい音とともに、怒った虎のような風が吹いてきました。
レラはおどろいて、持っていた本を手放してしまいました。
本は風にのって、空たかく飛んでいくと、あっという間に見えなくなりました。
風が通りすぎると、辺りはきゅうに しん と静まりかえりました。
やっと買えた、大好きな本だったのに。
おやおや、どうして泣いているんだい。
大切な本が飛んでいってしまったよ。
泣くのはおよしよ。よし、さがしに行こう。
だれの声だろう。
レラがきょろきょろ見まわすと、東の空からおおきな、おおきな鳥が飛んできました。
こんなおおきな鳥は見たことがありません。その鳥は賢者の美しさも持っていました。
さあ、のるんだ。
おおきな鳥は、レラにやさしい眼でいいました。
レラがのると、鳥はひと鳴き、おおきなつばさを羽ばたかせました。
どれほど飛んだのでしょう。
下には真っ白なじゅうたん。雲のうえに出たのです。
鳥さん、本はどこにあるの?
待つんだ…そうかわかったぞ。さあ、つかまってなさいな。
空からの光を浴びながら、鳥は雲に飛びこみました。
なんてひろい街でしょう!
いろんな色の景色をこえて、鳥とレラはひときわ高い塔の屋根に着きました。
そこには、おおきくてがさがさした鳥の巣がありました。そばには真っ青な鳥がいます。
巣の中には、レラの本がひろげてありました。
よくみると、雛たちは本を広げて布団にして寝ていました。
寒そうな巣の中で、レラの本はとてもあたたかそうでした。
いたずら好きの鳥でな。よくひとの物を盗むのさ。
鳥さんやめて。おちびちゃんがかわいそう。
でもこの本を探してたのじゃないのかね。
ううん、この本はあげる。どうかだいじに使ってね。
レラはそういうと、おおきな鳥の背中に乗りました。
鳥さん、ありがとう。
もとの道にレラをおろすと、おおきな鳥はひと鳴き、東の空へかえって行きました。
レラは思いました。
きょうあったことを、本にしよう。きっとすてきなおはなしになる。
はれやかな笑顔で、レラはお家へ帰りました。