2016-07-18

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本日からお世話になります私、増田と申します!こういった業界は初めてなので色々とご迷惑をおかけすることになるかとは思いますが何卒よろしくおねがいします!」

鮮血のシャワー事件から二ヶ月。私の隣には新たな顔が居た。

蛍光灯を鈍く反射する黒い髪。昨日床屋に行ったのであろう、横髪の空き具合に統一感がない。唇はリップクリームを塗っているのだろうか、グロスが効いていて、潤っているように見える。

彼は椅子を回転させてこちらを向いた。

「あの、増田と申します!あんまり経験がないのですが、少しでもお役に立てればと思います。よろしくおねがいします!」

キハキとした声で私に話しかけている。目には白と黒。その2色だけ。黄色だとか、赤色だとか、そんな不健康そうな色はどこにもない。

「ああ、よろしく。」

機械的にそう返事をして私は画面に向き直す。彼が来る事はわかっていたので、仕事を振れるように上司から言われテスト仕様書を書いているところだ。

だが、例によってまだ仕様書は出来ていない。彼が次に口にする言葉はわかっている。だが、それに対しての答えを持ち合わせていない。はて、どうしようか...

「あの、何か手伝えることはあります!?

彼は曇りのない瞳で私の顔を覗き込みそう言った。机と胸で板挟みになっている手は少し日焼けしていて、薄い産毛が顔を覗かせている。

「うーん、そうだなあ...」

私は椅子にもたれかかって天井を見上げた。しばらくの沈黙。瞼を閉じる。嫌な上司の顔が浮かぶ。瞳を開き、横を見る。

コーヒーを、入れてくれるかな?」

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