2016-02-19

年間200本を部屋にブチ込む。

今、映画を年間200本見るという人の記事話題になっている。

「数の問題じゃない。自分の頭で考えない評価価値はない」

「結局は個人の嗜好。嗜好の近い人の紹介するものを見ればよい」

色々な意見があり、どれも面白いしほぼ賛同するけれども。

この手の、「価値基準評価」という事柄について、ずっと考えていることがある。

実家が割と清貧で、高校生までそれほど外食経験がなかった。

大学に上がり、できた友人が美味いものが好きで、自分からみて驚くほど色々なところへ行き、楽しんで食べていた。

サークルに同期がいて、彼もあまり食に興味が無いタイプだったのだが、

サイゼリヤの「ミラノ風ドリア」が世界で一番好き、という。

「確かにミラノ風ドリアは美味い。コスパもいい。しかし、奴はサイゼリヤ以外の場所あんまり行ったことがない」

と、食べるのが好きな方の友人が言っていた。

食好きの彼は、和洋中問わず、一度食べれば実に細かく味を把握する。

食に関することだけは該博な知識を持っており、外国料理文化にも妙に詳しい。

しかしその一方で、コンビニおにぎりの冷たくしっとりしたごはんが好きで、よく喰らっている。

駄菓子も好きで、体型はお察しの通りであるが、いつも幸せそうだ。

なんの話だったか

自分が思うに、人間の頭のなかには「部屋」がある。

「食の部屋」であれば、食に関する、記憶や知識をしまっておく部屋である

例えば、「行きつけのこじんまりした喫茶店」は、手に届きやすテーブルの上に置く。

「めったに行けない高級中華の店」は、上のほう、手の届かない棚の上にある。

そうやって、自分のなかで、整理整頓して生きている。

ここで大事なのは

「行きつけの喫茶店のほうが、単価が安いから下だ」とか、

「高級な中華の店は、誰でも名前を識っているから偉い」とか、そういうことではないのだ。

そういうことではなくて、単純に「自分の中でどう判断して何処にしまうか」なのである

配置の問題だ。

しまいかた」の判断基準には色々ある。

味、値段、接客態度、内装、知名度、立地、一緒にいく人や使い方…

「食の部屋」でいえば、食に興味があるほど、詳細な基準があるはずだ。

ファミレスは親しみやすい。ファミリーに優しいし「柔らか青豆の温サラダ」は最高にコスパが良い。

エスカルゴも食べられるしワインも飲める。

しかし、同じエスカルゴでも、フランス料理店で食べるものとは若干違う。違ってしかるべきである

「どちらも同じように美味い」と感じられる者は幸いであるが、高い方が気の毒でもある。

出来れば記憶チェストの上あたりに置いて愛でたい。

恐らく、多く/深く経験を積んでいる人間のほうが、精緻で充実した部屋を作れるはずだ。

単純な上下でなく、諸々の価値基準考慮して三次元的に配置された記憶は、きっと役に立つ。


映画の話に戻る。

おそらく、「映画の部屋」も、ほぼ誰の脳内にもあると思われる。

200本の人の記事炎上気味な原因のひとつは、

その膨大なデータが、きちんと部屋に配置されしまわれていない(ように見える)からではないだろうか。

なぜ、その映画をここに配置したか。その価値基準が分からない、というように見える。

映画が好きであれば、映画というもの歴史が頭に入っていて、その歴史においてこの映画

どういう流れを汲む、どんなポジション作品か、ということが見えているはずだと思う。

例えば、GoogleのPlayストアをたまに見るけれども。

「このアプリはほんとにクソだぜ!」とか「神だぜ!」とかレビューが書いてある。

アプリに限らないが、残念なレビューコメントだな、と個人的に思うjのは、

自分はこのくらい高く/低く評価した!」というだけのもの

赤の他人が何点評価していようが、知らんがな。

こっちは、その製品長所短所が知りたくて見ているだけである

また、ネットで見かける「オススメの本/映画/漫画ない?」系も若干不思議を感じる。

勿論、はじめからそれほど期待はしていないのだろうし、当たれば八卦面白いのはわかる。

が、オススメするほうもされるほうも、相手の年齢も嗜好も何ひとつ知ろうとすることなく、

「オレが面白いと思った本」を無邪気に薦めていく。

そりゃ、面白い本ごまんとあるだろうけれど、その判断基準を聞かなくていいのだろうか。

「この本のどこがいいの?」「うん、このヒロインが俺の初恋の人に似てるんだよね」

みたいな理由だったらどうするんだ。いや、それはそれで面白い本との出会いかもしれないが。


散漫になってきたけれども。言いたいのは。

物事上下でなく、色々な価値基準から観て、知識の部屋にマッピングしていくのが大事だと思う。

食べ物や服や住居はだいたい、その価値にみあった値段がついているが、

文化芸能・娯楽などに関してはその限りではない。だから見えづらいけれど、

「みんな違って、みんないい」という視点をもちつつ、でも完成度や価値意識しつつ、

多面的評価できないもんかなぁと思う。

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