先週、父方の祖父が亡くなった。
85歳、大往生だった。
大層可愛がってもらったものだ。
合うたびに私の写真をとり、
私が小学生になるまでは生後○○日なんて、
リビングに飾ることもしなかった。
当初は気に入らなかったかな?なんて疑問に思ったが、
すぐにその疑問すら忘れていった。
祖父が亡くなったあと、
足の悪い祖母について、祖父の事務整理に銀行に行ったときのことだ。
「お孫さんですね、おじい様には大変お世話になりました」
なんて、話しかけてくるのだ。
私は思い切って聴いてみた。
「あの、どこかでお会いしたことはありましたか?」
80近くなった祖父は、
その話しの間に必ず私の自慢話をしたそうだ。
「毎回ね、おじい様は『たまたまカバンに入っていた』なんて言って写真を見せてくれたんですよ。嬉しそうにね、初孫がこんなに立派に育ったなんて言って。本当に嬉しそうに。だから私はあなたの顔を覚えてしまったんですよ。」
台紙に張ったものをわざわざ銀行の人に見せるなんてことは出来ない。
けど、たまたま書類を入れていたカバンに入っていたなら、ちょっと話してもかまわないだろう。
そう思っていたようだ。
孫の成長した姿の写真を、
いつも自分の側にあって、
人に自慢出来るようにするために、
祖父は私の成人式の写真を台紙に張りリビングに飾らずにいたのだ。
祖母はなかばあきれたような、申し訳なさそうな顔をしていたが、
私は目頭が熱くなってしまった。
祖父がそこまで喜んでいてくれたのか。
私にもいつか子どもができ、
孫ができるようになったら、
仕事は大変だし、
そんな風なおばあちゃんになれるなら
今の日常も悪くないかな、
なんて思いながら家路についた。
夕焼けがとても綺麗な帰り道だった。