2016-01-21

とある産廃業者の廃棄カツ問題解説感想

私は産廃業の営業10年ほどやってる若僧です。

もちろん不正を行ったダイコーとは無関係ですし、今回の事件で初めて存在を知りました。

世間を騒がしている廃棄カツ問題ニュースに対して色々感じたことを自分用に徒然とメモしておこうと思います



つい先日、知事発言記事ホットエントリー入りして無責任だと叩かれました。

http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1867840.html

【廃棄カツ】 大村知事CoCo壱番屋被害者だが、社会的責任は重い」 : 痛いニュース(ノ∀`)

これ、業界的に見ると知事発言ってすごく真っ当なんですよね。

コメントを見ると「CoCo壱は全く悪くない」「CoCo壱被害者なのに意味が分からない」という意見が多かったのが印象的ですが、法律的にはそうもいかないんです。

廃棄物に関する法律には「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(通称、廃掃法)が該当します。

その中に「排出事業者責任」という概念があります

これは排出事業者廃棄物の所有者)が責任を持って廃棄物を適切に処理しなければいけないということを意味してます

まり委託した産廃業者不正に処理した場合排出事業者責任になるということです。

から今回のケースの場合産廃業者不正に処理するであろうことを見抜けなかったCoCo壱責任になるんです。

ただしこの法律は、基本的には不法投棄を防止するために「排出事業者責任を持ちなさいよ」という法律です。

今回の場合不法投棄ではないので一番被害を受けたのが排出事業者CoCo壱というのが面白いところです。

では、どうやって排出事業者が適切な産廃業者かどうかをチェックするかというと、マニフェスト廃棄物がきちんと処理されたか確認する証明書)だったり、処理施設の視察だったりがあります

ちなみにCoCo壱は両方きちんとしてたらしいので事前に不正を防ぐのはほぼ不可能だったと思います

マニフェストについて今回は偽造が行われたわけですが、特に今回は偽造がされやすい状況にあったと思います

通常は産廃処理を委託する場合、まず排出者は中間処理業者委託し、中間処理業者が最終処理業者委託します。

中間処理業者というのは廃棄物の減容化を行う施設で、最終処理業者は通常は埋立処分場を指します。

例えばプラスチックを廃棄する場合中間処理業者が焼却処理をして、残った燃え殻を最終処理業者埋立処分します。

ただし例外があって、中間処理後に出たものが全て売却できる場合中間処理業者が最終処理業者にもなれます

今回不正を行ったダイコーという会社HPを見ると、通常は食品廃棄物肥料飼料に変えて販売してるようなので、中間処理業者でありながら最終処理業者でもあったと思われます

その場合マニフェストの処理がダイコーだけで済むので偽造するには非常に良い環境だったと思われます

ちなみに大手建設工事だったり、役所場合は、厳しいところだと廃棄物を出す際に追跡調査といって廃棄物運搬車を追跡して処分場の受入ピットに落とすとこまで写真に撮ったりします。

これ、排出者にとっても大変だし経費が嵩むんですが、産廃業者にとっても大変なんです。

だって何か行動するたびに「写真撮るんで止まってくださーい!」とか言われるので余計な時間がかなりかかってしまうんです。

処理場の視察にしても仮に1社あたり年1回でも、300社が視察を希望すれば毎日対応必要で、その度に案内係を割かなくていけませんし、人が通る時には重機を止めたりしなくちゃいけません。

マニフェスト以外にも細かい書類提出を求める会社も多いので事務作業は増える一方です。

中には追跡調査写真撮りを産廃業社側にお願いしてくる方も多いです。

昔はただ廃棄物を処理すれば良かったのが、負担が大きくなる一方で処理費は大きな値上げは出来ず、1日の処理量が利益に直結する産廃業者にとって正直厳しい現状です。

コメントの中には「国や県が不正産廃業者をチェックしないのか!」という意見も多かったです。

勿論チェックはしてますが、正直不正を見抜くのは難しいと思います

産廃処理の許可自体基本的には処理できる設備環境基準クリア出来れば取得できます。(実際はかなり厳しいですが。)

例えば、柔道初段の人が暴力事件を起こしたとして、位を与える前に犯罪を起こすことを誰が予測できるでしょうか。

今回のような事件場合、四六時中処理施設や全従業員監視できるわけないので防ぐのはかなり難しいと思います

ただダイコーについては今後許可取消で何らかの処罰が下されるのは間違いないと思います

今回はCoCo壱というネームバリューと規模で大きなニュースになりましたが、廃棄物転売されるケースは大いに有り得ると思います

廃棄物の中には今回のように食品や、売れ残り製品事務所撤去だと高級な家具電化製品など、捨てるのが勿体無いケースはよくあります

「売れば良い金になりそうなのに勿体無い」とか冗談担当者同士で話すこともあります

あくま冗談絶対しませんが(笑)

ユルい会社だと「使えるものがあれば持って帰っていいよ〜」と言われるお客様もいます

例えば芸能人のグッズなんかは少し減ったくらいじゃバレないし、ヤフオクとかに出ててもおかしくないよなぁ。

機械類なんかは中間処理する振りして、実際そのまま中国とかに行くケースなんて全然あり得そうだなぁと思います

今回のケースは国内スーパーだったんでバレるのは当たり前で大胆すぎて笑ってしまいましたが、海外の怪しい業者転売してたらバレにくかったんじゃないかな?

今回は防止策としてCoCo壱が廃棄する前に汚泥に混ぜるという案を講じました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160119-00000038-asahi-soci

廃棄カツ問題壱番屋が防止策 混ぜて処分監視強化(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

被害者なのにここまでするのか?」という意見も見ましたが、前出の排出事業者責任を考えれば極真っ当なことだと理解できると思います

不正産廃業者に処理されないようにするのは排出事業者の役目ですから

ただ事件が発覚してからの、このスピード対応は本当に凄いと思います

大事書類シュレッダーにかける、情報カードは切れ目を入れるといった当たり前なことと同様に悪用されないよう排出者が気をつける必要があります

不正を行わないようチェックを厳しくするのは世の流れですが、極一部の悪徳産廃業者がいるおかげで色々面倒くさいことになってるので早く撲滅しやがれと思う今日この頃です。

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