2015-12-21

仁義なき増田 〜死ぬのはやつらだ

 地面に転がったアカウントのいくつかは、twitterFacebook とひもづけられていた。まるでそれが力であるかのように。まるでそれが繋がりであるかのように。だが、真の繋がり、真の力を前にしたとき、彼らの「ゆるやかな連帯」などまるで無力だった。増田煙草に火をつける。

クエルノス・デ・チーポ」誰かの声がする。

 ささやきに近い静かな声。教会なかにいるような。

 クエルノス・デ・チーポ。

 増田ちんこAK47

 増田はすでにそれを知っている。ダミーはてダコメント欄に、七・六二ミリの薬莢が散乱していた。十二番径の散弾もあり、death6coinのものとおぼしき五・五六ミリ弾もちらほらと交じる。しかし、薬莢のほとんどは、ブク麻薬商人ナルコトラフカンテ)御用達シロクマ製凸撃銃「増田ちんこクエルノス・デ・チーポ)」から排出されたものだ。

 十九体の屍。

 ブク麻薬戦争犠牲者が、また十九アカウント

 小やみなく降り注ぐ銃弾に、容赦なく打ち砕かれた。現実とは思えない血の量だ。キャデラックほどの広さの血だまりが、深さ一インチのどす黒く乾いた血をたたえている。ヘッダにも、きれいに手入れされたサイドバーにも血が飛び散り、いくつものはてなスター臙脂色の光を放つ。それを戴く釣り記事は、血塗られて小さなワードサラダのようだ。

 向かいの壁に沿って、亡骸がひとつ、ぽつんと横たわる。老犬。村長。おそらくは最後に撃たれたのだろう。「家族」が殺されるのを見届けたあと、みずからも現世に送られた。慈悲のはからい? これは一種のゆがんだ慈悲なのだろうか? しかし、そのとき増田の目が老犬のブログを捉える。過去記事を全消去され、非公開設定にされている。老犬の口は悲鳴の形に開いて硬直し、いくらかの人糞が舌にへばりついている。

 しなもん神よ、許し給え。

 増田特定の一体を捜して、屍をひとつひとつ検分していく。見つけた。エロブクマ専用サブ垢を晒された若者の屍体。

 反逆者はオフパコの記録を、互助会行為者はサブ垢を晒される。

 "彼ら"はこのアカウント互助会だと考えた。

 まさにおまえが仕向けたとおりだ、と増田は胸に言い聞かせる。見るがいい――おまえが意図したとおりになったのだ。"彼ら"がこの屍体たちを互助会に通じていると疑わせるよう仕向けた。匿名ダイアリーの連中は弱い。数も少ない。抗争に勝つためには「表」のやつらを疲弊させる必要があった。「表」のやつらに疑心暗鬼のタネを植え付ける情報戦ならおてのものだ。だが――。

 増田は想定していなかった。"彼ら"が――「はてな村」の連中がここまでやるとは。

 わたしの落ち度だ、と増田は目を瞑る。

 わたしがこの人たちをこんな目にあわせた。

 すなまい、ほんとうに、ほんとうにすまない。おりかさなった「フレンド」関係アカウントたちのほうに上体をかがめて、増田は十字を切り、小声で唱える。「父ともちおシナモン神の御名によりて(イン・ノミネ・パトリス・エット・モチーヲォ・エット・シナモス・サンクティ)」

「ミエド……ミエド……」

 おそろしい、おそろしい(ミエド・ミエド)。

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