2015-10-11

民H24

設問1(1)

1. Fの主張は、以下の理由で認められない。
2. 甲土地は元々Cが所有していた。Cの死亡によりDEはそれぞれ2分の1の共有持分権を取得した(900条4号)。したがってDの死亡によりBが相続したのは、2分の1の共有持分権に過ぎない。そのためBA間の売買契約によりAが取得したのもこの2分の1の共有持分権である最後に、Aが死亡したことでFが相続したのもこの2分の1の共有持分権に過ぎない。
 したがって、Fが甲土地について有する権利は2分の1の共有持分権に過ぎない。そのため、Eに対して、甲土地所有権自己にあることを主張することはできない。

設問1(2)

1. Fが有している共有持分権(以下、持分権αと呼ぶ)について
 持分権αについて時効取得を主張する場合、これはFに帰属する権利である(上述)以上、162条1項の「他人の物」という要件を充たさないのではないかという点が問題となる。
 162条1項の趣旨は、永続した事実状態尊重証拠散逸の救済にある。この趣旨自己物についても当てはまることから、「他人の物」であることは同条項要件とならない。
 したがって、下線部の事実法律上の意義を有さない。
2. Eが有している持分権(以下、持分権βと呼ぶ)について
 ※ここよく分かりません。

設問2

1. 本件でGH間には寄託契約が締結されており(「保管することを約して」(657条))、和風だしが丙建物に引き渡されている(「物を受け取る」(同条))。そのためGH間には寄託契約が成立している(657条)。
 その効果としてGは、和風だし1000箱の返還をHに請求することができる(662条、契約書(以下「契」と略す)6条)。
2. これに対しHはまず、和風だし2000はこの半分が存在しない以上、この返還請求は履行不能である反論している。しかし、丙建物には和風だし1000箱が残存している以上、社会通念上履行が不能と言うことはできず、この反論は認められない。
3. 次にHは、Gの返還請求を認めるとFの権利侵害するから返還はできないと反論している。
(1) Fの権利とは何か
 この反論検討すると、そこに言うFの権利とは何かがまず問題となる。
 本件ではFH間でも【別紙】の内容の寄託契約が締結されている。
 その上でHは、G(「他の者」(契3条1項)との寄託契約に基づいて、Fの和風だし(「本寄託物」(同条))と種類及び品質が同一なGの和風だしを保管している。そのためHは、契3条1項の効果として混合保管が許され、現にそうしている。
 その結果今度は契4条の要件(「混合保管をされた物」)を充たし、その効果としてFは和風だし2000箱について2分の1の共有持分権を有するのである
 これがHが問題とするFの権利である
(2) Fの権利侵害されるとはどういうことか。
 Gの返還請求を認めると、丙建物に残存する和風だし1000箱が全てGの手許に行くこととなる。この結論はFが有する共有持分権の実現を妨げることから、Fの同権利侵害することとなる。
 そして、Fの権利侵害してまでGの返還請求を認めることは妥当でない。契3条1項によれば、本件寄託契約当事者は混合保管を承諾したことになっている。これは、単に混合保管それ自体を承諾するにとどまらず、混合保管に伴い生じるトラブルにつき、混合保管の当事者間で合理的な利害調整をすることも承諾したことを意味する。それにもかかわらず、Fの犠牲の下Gの返還請求を認めるのは、契3条1項に反し、GF間の公平にも反するのである
(3) GF間の合理的な利害調整
 それではGF間の利害を合理的に調整するにはどうすればよいか。
 これを検討すると、契6条の「同一数量のもの」という文言制限解釈し、「(各寄託者の共有持分権の限度で)同一数量のもの」と解すればよい。こうすれば、契3条1項、4条、6条を矛盾なく解することができる上、このような利害調整はGが契3条1項でした「承諾」の範囲であると解される。
(4) 上記解釈を前提としてGに認められる権利
 上記解釈を前提とすると、Gは和風だし1000箱を寄託しているものの、Gは残存する和風だし1000箱に対して2分の1の持分権しか有していない。そのため、Gは500箱を限度(残存する1000箱×2分の1)に返還請求が認められる。

設問3

1. 本件でFH間には山菜おこわを保管する合意がなされており(「保管することを約して」(657条))、山菜おこわ500箱が丙建物に運び込まれている(「物を受け取る」(同条))。そのためFH間には寄託契約が成立している(657条)。
 その効果としてHはFに対し、寄託物についての注意義務を負う。ただし山菜おこわは無償で保管することとなっている(「無報酬寄託を受けた」(659条))から、注意義務の程度は「自己財産に対するのと同一の注意」(同条)である
2. Fは上記注意義務違反理由にHに損害賠償を求めているが、本件でこの注意義務違反は認められるか。
 本件で山菜おこわ500箱が盗取されたのはHが丙建物の施錠を忘れたかである財産を保管する建物に施錠をするのは、それが自己財産であってもそうするのが通常である。したがって、Hの上記行為は注意義務に反すると言える。
3. したがって、Hは自身の注意義務違反で(「債務者の責めに帰すべき事由によって」(415条但書))、山菜おこわの返還が不能となっており(「履行をすることができなくなった」(同条))、415条の要件を充たす。
4. 問題は賠償すべき損害の範囲であり、これは416条の規律により決する。すなわち、①当該損害が特別損害に当たる場合には、②債務者が予見可能な場合に限り賠償の範囲に含まれることになる(416条2項)。
(1) ①について
 Q百貨店の全店舗山菜おこわを取り扱ってもらえなくなったとの損害は、評判次第で山菜おこわを取り扱ってもよいとのQ百貨店の申出が前提事情としてある。このような事情は通常あるものではなく、「特別事情」(416条2項)に当たる。そのため上記損害は特別損害に当たる。
(2) ②について
 確かにFは、Hに対してQ百貨店の申出があったことを伝えているから、予見可能性はあったと言い得る。
 しかし、実際にQ百貨店山菜おこわを全店舗で取り扱うかどうかは、山菜おこわの評判が良いものであるとの不確定要素に係っている。
 そこで、416条2項で求められる予見程度が問題となる。同項の趣旨は損害の公平な分担にある。そして、Fの主張する上記損害は巨額なものとなることが予想される上、元々FH間の寄託契約無償であることを考え合わせると、その予見の程度は厳格なものが求められる。具体的には、山菜おこわがQ百貨店で取り扱われるのがほぼ確実だとの予見が必要である
 本件でHがFの話から予見できたのはせいぜい、山菜おこわをQ百貨店の全店舗で取り扱ってもらえる可能性があることぐらいである。
 したがって、本件で416条2項の「予見することができた」との要件は充たさない。よって上記損害は賠償の範囲に含まれない。

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