検閲業界には明るくないし興味もないが、たまたま見つけてへーと思ったのでここに書く。業界人にとっては何を今さら的な感じなのかもしれない。
『絶対に行けない世界の非公開地域99』という邦訳本がある。昨年末に日経ナショナルジオグラフィック社という出版社から発行された本で、表紙にも例の長方形のロゴが入っている。
私は本は頭から終わりまで隅々読む面倒なタイプなので、ずーっと眺めて行って最後に奥付を見ると、左下にこう書いてあった。
"100 PLACES YOU WILL NEVER VISIT: The World's Most Secret Locations"
邦訳版より一か所多い。まえがきに秘密の場所を明らかにするものである的な記述があるような本で、一か所丸々を落とすというのはなかなか高度なギャグである。
気になって原著タイトルで検索すると、何が落とされたのかがわかった。
"Ise Grand Shrine" と "Woomera Prohibited Area" の間にある、"Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant" つまり福島第一原発だ。
(どうでもいいんだけど、第一ってdai-ichiなのね。そこまでが固有名詞だからか)
96番が割り振られている伊勢神宮の次は97番でウーメラ立ち入り禁止区域となっていて欠番もないし、奥付以外に疑問に思う場所がなく、明示的には何も触れられていないので、なぜ落としたのか、自主なのか外圧なのか、などは不明である。
個人的に最も気になるのは、この検閲を原著の著作者と出版元は認識し承諾しているのか、そもそもその必要があるのか、という点で、権利関係について単純に知りたい。
最後に、この本は割高な雑学本といった感じで、検閲云々を完全に抜きにしても定価2200円+税で買うかどうかは慎重になった方がいい。
検閲と言うより自主規制では?
こんなこと言っててほんとに世の中よくしたいと思ってるんですか?