2014-12-04

退学の周辺

10年ほど前にとある大学入学した。

大学受験が全国対ゲームのように思えて楽しかったため流れで入ったが、

それ故大学生活の展望も、勉学に対する意欲も全く持ち合わせていなかった。

結果、文系学部にも関わらず1回生前期で3割ほど単位を落とした。

その後更に低調となり、遂にある辺りから大学に出ず引き篭もりがちになった。

確か二十歳の誕生日は一日中布団で寝たきりで

「ああこれで地元市役所高卒区分を受けることができなくなったのか・・・

ということを考えていた気がする。

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ところで、かつて在籍した学部には

「前期は4月中に、後期は10月中に休学届を提出し、受理されれば学費は月割り」

という規定があった。

半期28万ぐらいが4万8000ぐらいで済む。

学生生活における1年の違いが生涯年収における何百万の差にうんたらという言説もあるが、

目先の20万も大きい。

半期開始早々にドロップアウトセンサーが反応し、「あ、これはヤバイな。」と思うところがある以上、

この選択肢意識せざるを得なくなった。

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このようなクズ人間故に、休学届の提出は4月30日(または10月31日)の夕方以降であった。

ギリギリまで迷っていたということもあるが、現実学費無駄にするという実感が迫ってくるのが大きい。

ある時は本当にギリギリになってしまった。

休学の申請の手順であるが、教務で申し出ただけでは申請したことにならず

大学財務部で1月分の学費を支払い、その領収書を休学届に添付することで初めて受理される。

学部教務の受付時間が17時までのところ、着いて休学すると申し出たのが16時45分頃。

残り15分で財務部との間を往復しなければならない。

ここで問題になるは、在籍していた大学が山の上にあったということだ。

20万の懸かった山道全力ダッシュというのもなかなか経験できるものではなく、

学生時代に得られた数少ない貴重な体験の一つである

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余談だが、当時は上記のような休学時学費免除制度一般的ではなかった。

就職留年問題になった頃、それ故に休学する場合学費免除という制度が導入された大学がいくつかあった。

まり普通に休学する分には学費も通常通り発生するということだ。

今では学費制度はそれなりに広まってきているようである

中退先延ばし・休学におけるテクニックの一つとして覚えておきたい。

http://www.etic.jp/kyugaku/university.html

これも余談だが、別学部にいた友人から担任教員とのやり取りで休学手続きをしたという話を聞いた。

そもそもこちらの学部には担任すら存在しないのだが、

そういう点も含めて休学一つとっても学部が違うだけでも随分変わってくるものだと妙な感心をした記憶がある。

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こうして休学~復学を繰り返した結果、最終的には5年在籍して退学するに至った。

実働2年半で取得単位が70丁度、卒業要件の約半数。まあこんなものかもしれない。

決め手となったのは第二外国語の再履修のクラスがなかなか決まらず、

ベンチで一人座って途方に暮れていた時に不意に涙が溢れ、この場にもう居たくない、と思ったことだった。

思えば語学とは極めて相性が悪かった。

暗記をするということが恐ろしく苦手である時点で仕方がないのかもしれない。

ある時、第二外国語ドイツ語課題で「ベートーヴェン第九の歌詞を覚えて書き取り」というものがあった。

他の学生にとっては並の課題かもしれないが、これが恐ろしく苦痛で仕方がなかった。

そしてその課題が出された直後から、ある車のCMで第九が頻繁に流れるようになった。

正直これは堪えた。今でも第九は苦手だ。

所謂ゼミを履修するための要件の一つに第二外国語単位一定以上取得するというものがあった。

当然履修することなど出来るはずがなく、一瞬たりとも研究室所属したことがなかった。

文系なのでどの程度の密度で事が行われるのか今でもさっぱり予想がつかないが、

学生たるもの少しぐらいは研究というものに触れておきたかたかもしれない。

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退学を申請する際のシステムも少し変わっていたかもしれない。

教務の説明によれば

「退学した場合支払った学費は戻ってこない。従って期末まで休学ということにして、改めて判断して欲しい。」

とのことだった。

まさか前述の休学のテクニックに応用編が存在するとは思ってもみなかったし、

たまたま申請に行ったのが10月で助かった。

最後に、と思って掲示板を見てみると、あらゆる掲示物に記された学籍番号が1から始まっていた。

学籍番号の頭二桁は入学年度を示している。私は2006入学だったので06始まりだった。

入学してすぐの頃、一人二人ほど99で始まる学籍番号が掲示されることがあった。

01辺りを見かけることすらなかなか無い。そんな中、十の位から違っているのは奇異に見えた。

ところが気付けば自身もそちら側に移っていたことをはっきり認識した時、

変な話ではあるが「やはり退学は止むを得ないか」とも何故か思ったものだった。

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周りで退学が視野に入っている人間が少なくとも3名いた。

際どく耐えた者2名、最終的に退学した者1名。ただその者も私のようなクズではなかった。

ある時在学中お世話になった部活会合に出てみると、退学するか悩んでいる現役生がいた。

類は友を呼ぶではないのだろうが、やはり似たような者が自然と集まるように出来ているのかと妙に納得した。

極々たまに話の流れで自身が退学したことについて触れることがある。

勿論その受け止められ方は様々だが、ありがたいことに嫌な顔をされたことはない。

退学という話題に触れた際、明るく笑って流してくれる人は大事にすべきだ。

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退学について書き殴ってもよいという場を見つけたので、吐き出させて頂いた。

普段滅多に文章を書いたり打ったりしないので何かと散らかっているが、ご容赦願いたい。

退学 Advent Calendar 2014

http://www.adventar.org/calendars/573

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