2014-09-12

店員の薦めるままに私はそれをバケットに塗って口に放り込んだ。 濃厚な味わいが広がり、それでいて後に残るのはさっぱりとしたさわやかな香りで、しつこさを感じさせない。

私の人生はもう半分を折り返して新しいことなどそうそうなく残りの退屈な人生を送るものだと思っていたが、まだこんな出会いが残っていたのかと歓喜の気持ちが抑えられなかった。 今の私の顔はきっとひどく緩んでいることだろう。 うまい食事は人生を豊かにしてくれる。

「これはいったい何なんだ?」

当然の疑問だ。 今まで食べたことのある味とはかけ離れていて、肉とも魚とも野菜ともつかぬ。 類推することさえ許さぬ珍奇さである

ガンダムペーストです」

一瞬、店員の言葉理解できなかった。 まさかここで出てくるとは思わない単語だったからだ。

しかし、数秒の後、ゆっくり言葉が私の頭に浸透してくると、これほど珍奇な味わいであればそういうこともあるのかもしれないと思えてきた。

「ははっ。 驚きましたか。 まあ今ではガンダムを手に入れるのは難しいですからね。 ペーストにするなんて贅沢なことをしてる店はきっと世界でここだけですよ」

そうは言ってもそう高い額で提供しているわけではない。 只々、うまいものを作りたいという店主の思いが伝わってきた。

ガンダムペーストの味わいの余韻の中でゆっくりと酒を飲みながら、店主の心意気に心からの賛辞を送るのであった。

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