小学生の頃、友達の作ったカードゲームがクラス内だけで大流行した。
給食の牛乳瓶のフタを通貨にして、各々自由に作ったカードを交換しあった。
僕は、転校してきたばかりで、うまくその輪に入っていけなかったが、
夕方の優しい日差しが満ちる教室で、演劇の大道具を急ピッチでみんなで作った。
誰かがコンビニでアイスを買ってきて、男女混じって手をベタベタにして食べた。
僕は、部活を掛け持ちしていたせいもあり、クラスの演劇にはあまり参加できていなかった。
それでも、僕は、その光景を、今も鮮明に覚えている。
ゼミ旅行の話だ。ゼミ旅行なんて、近県の旅館に行く程度で、徹夜で飲んで、麻雀するだけのつまらないものと思っていた。
ゼミの同期の女の子は、安い缶チューハイを両手で持って僕に言った。
大袈裟な。こんな旅行は、来週には他の旅行に上書きされてしまう。
「あなたにとっては、ただのつまらない旅行かもしれないけど、私には大切な思い出なんだよ。
その後、僕はビールを何回か一気飲みして潰れた。彼女の楽しそうな顔は、今でも当然覚えている。
たくさん昔話をした。
あの頃に戻りたいとは違うのだが、この懐かしい思い出にずっと浸っていたくて仕方がない。
そして、昔の家族のことを思い出して、涙が止まらなくなるのだ。
馬鹿だね、僕は。
最後の一行でキモさが激増している 狙ってやったのならなかなかのものだ
本当の望みは多分「あの頃に戻りたい」じゃなくて、 「今、友達がほしい」だな。