2014-07-17

医者が癌の早期発見に失敗してトンデモ療法試したけど効かなかった話

今日増田はそんな感じの話題らしいんで、自分体験談ひとつ

 

うちは両親が医者、俺も医者医者一家である。ちなみに開業とかはしてない。病院勤めが主。

で、その医者である父親が癌になった。健診を受けたり他の病気治療で全身検査などもしていたのだが、早期発見できなかった。

癌のできた場所は専門領域としては俺の分野だったが、当時は俺もまだペーペーだし離れて住んでいたこともあり、その辺りは全く役に立たなかった。

 

発見時は既に手術できないくらいに進行していたため、治療化学療法

一時的には親父の体調も改善し、趣味を再開したり仕事を引き継ぎのためにまとめたりはできたが、まあ完治はならず。

そこは我々も望めないのが分かっていたので、今のうちにと家族旅行をしたりした。

 

そうこうするうちにもゆっくりと癌は進行し、親父が弱ってきて治療もしんどくなった頃。

親の知り合いの誰かが、怪しげな治療法を試してみないかと持ちかけてきた。

その知人の詳しい立場や来歴は知らない。分かるのは、そいつの提案した治療法は現状では実用化の目処も全然ない、いわゆるトンデモ療法だってこと。

 

その治療の怪しさについては、両親も当然分かっていたと思う。

でも親父はもはや闘病に疲れていた。ガチ治療を続けることにも、そういうノイズ排除することにも、とにかく何もかもに疲れていた。

完治の見込みがなく、元気に活動もできなくなった以上、その時点での親父の望みは静かに苦痛なく余生を過ごすことだけだったに違いない。

親父はトンデモ療法を受けることに決めた。

 

俺は本当はそんなのやめてほしかったが、親父の気持ちも分かる気がしたので、何も言わなかった。お袋も何も言わなかった。

要はトンデモを口実にして、闘病のリングから降りることを、俺たちは受け入れた。

すっかり痩せ細った親父に対して「もう少し頑張ろう」とは言えなかった。

 

もちろんトンデモ療法は効果などなく、親父は亡くなった。

しろ化学療法をやめたことで少し死期が早まった可能性もある。が、闘病をやめることに決めたのだから、そこは大した問題じゃない。

癌が早期発見できなかったことについても、仕方がない。検査が万能でないのは俺自身が良く知っている。

親父の辿った経過は、トンデモ療法部分を含めて、俺たちにできる精一杯だった。

 

自分患者さんでも、ダメ元だし金が無駄になるのは分かった上で、それでもトンデモ療法を排除するよりは受けてみようという人は居た。

自分経験もあるので、そういうのは強く止めはしない。

が、本気でトンデモ療法が効くと思っていそうな人には、やっぱり説得を試みる。説得が通じた事もあるし、通じなかった事もある。

そもそも病院に来ない人には説得を試みることすらできないから、俺の出会う人はまだ話のできるチャンスがあるグループなんだけど、それでもね。

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  • 俺は自分自身が医者で、治らないものを治ると謳う(またはそのように錯覚させる)代替医療は、本当に嫌いなんだけども。 効果的な治療法がない状態で、苦痛緩和などの可能なことは...

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