2014-05-19

「深夜一人」「強盗の的」

これだけでどこのことだかわかってしま飲食店があるとすれば、店側からすれば実に不名誉なことである。が、実際あるので仕方がない。聡明な読者の皆様におかれましては、俗世の情報を全てシャットアウトした寡黙な山の修行僧でもない限り、あるいは大地を踏みしめ草木を愛し日々必要な分だけの命を頂き神に感謝して暮らすトラディショナル生き様が美しい異国の民族でもない限り、もうこれが何を指しているのかはスイッチを入れれば電球に明かりが灯るが如くおわかりかと思う。

人件費の削減」と一口に言って、何をイメージするだろうか。

半径200m以内に競合する三つの同業他社店舗があるとしよう。今回話に出している、仮にA丼屋としよう、A丼屋という店は、同じ日の同じ時間に働いている従業員の数が他二店より必ず一人少ないのである。そしてこれは働いている側の実感からすると、「最低限の人数」ではなく、「最低限の人数-1人」なのだ。やってみると、これ結構大変である

しかしながら、店舗在中する人間の数を減らす、というだけならまだマシ。そう、それくらいならまだよかった。

真の問題はそのシステムにある。まずは営業報告書についての話をしよう。

A丼屋の営業報告書では、1日を4つの時間帯に分け、各時間帯ごとに営業報告書を記入し、本社ファックスを送るという仕組みだ。次の時間帯に切り替わるまでに売上データの集計、売上を計算し金庫に保管、ほぼすべての食材在庫量をチェック、その時間帯に働いた従業員労働時間、などを記入する。ちなみにここ、出勤はタイムカードではなくこちらの営業報告書への記入で申請する。他に勤怠報告書というのもあり出勤の度に2種類書かなければならないのだがこの話はここでは割愛する。

忙しくて営業報告書のファックスが間に合わないと、本社から催促の電話がかかってくる。毎度この本社電話口と店舗の温度差やべえな、とは思うがまあそれも本旨から外れるのでカット。慣れているアルバイトは催促の電話無視して終わり次第送ったりすることもあるし、そもそも忙しすぎて電話を取れないこともある。(余談だがA丼屋の電話顧客へ番号を公表していないため、本社社員、ならびに業者からしかかかってこない)

この営業報告書には「労時売上」という項目がある。これがA丼屋のブラックたる由縁であると言って間違いはない。では、なんぞこれ

先ほど営業報告書の記入項目に「その時間帯に働いた従業員労働時間」を挙げた。これは、例えば昼帯の営業報告書に記入する際、「7時から12時まで3人働いた」ということであれば、5時間×3で「15時間」と記入する。全員の時間を足すとかちょっと何を言っているのかよくわからない。公式を覚えず数学試験に臨んだエキセントリック学生が、意味も根拠もないのに「とりあえず足してみるか…」と奇行に走る、なんかあの感じを彷彿とさせる。

そして件の「労時売上」というのは、総売上から消費税を除いた額を先の労働時間(例で言えば15時間)で割ったものである。つまるところ「1時間あたり従業員1人がどれだけ売り上げたか」の額であるらしい。へー。 なんか寒気が。

問題はここから。この労時売上が目標額(最初は5,000円と聞いていたが、エリア管理する社員によって増減されることもあった)に満たない場合、なんと架空の休憩を取らされるのである。営業報告書に記入する労働時間を減らすのだ。そんなことを研修の段階から指導される。

熟練アルバイターは「もう今日は暇だな」と察すると、シューティングゲームで言うところの「置き」のように見越し休憩を回したりもする。その後混んだりすると悲惨だが。

僕らはこんなアコギ経営片棒担ぐために義務教育算数を習ったのだろうか?いや違う。隔月で高級ソープに通うためには毎月の生活費をいくらにすればいいか、ということを計算するためだ。と、童貞が申しております。筆者は素人童貞ですらないのだ。

いやらしい話にそれたが、それ以上にいやらしいのは売上目標アルバイトシフトを達成できるかできないかというギリギリラインで組むというやり口だ。自分のいた店舗では、土日の昼、いわゆる稼ぎどきの店舗高校生3人だけで回し、毎度どう時間を削るかの相談をしていたこともある。

その上、忙しすぎて残業をせざるを得ない状況においても、売上目標の達成だけが優先された。サービス残業強要である。進んでサービス残業をするアルバイトまで現れる始末。「ほったらかしにして帰ることもできるが、この後に入る同僚のため、そして何より食べに来るお客様のため」と残業をし、しっかりとその時間残業を申請したところ、「お前のせいで目標クリアできなかった」と長期間シフトを削られた。削られた分は別の社員からの他店舗ヘルプ要請に応じることで稼いでいたが、このときやっと何かがおかしいことに気付く。

ご存じの方も多いかもしれないが、このA丼屋には店長社員も常駐しない。夕方の暇時は女子高生一人しか店にいないなんてこともある。もうこの時点で労働法の皆さんが握り拳をバキバキ鳴らす音が聞こえてくる。あ、目が赤く光ってる!

ちょっと思い出してみてほしい。もしくは現物を取り出して見てほしい。飲食店アルバイト募集を見ると、ほとんどホールキッチンで分かれていないだろうか。しかしこの店は分かれてない。一人勤務となれば、たった一人のアルバイトが「いらっしゃいませー!」と言ってお冷を出し注文を取り、調理をしてそれを提供し、お会計とお膳下げにテーブル拭き、食器洗浄から食材仕込み、までやっているというわけだ。法的にアウトらしい、これ。能力的なできる・できないの話ではない。

最近アルバイトが辞め過ぎて閉店を強いられる店舗が多いと聞く。固形燃料で火をつける鍋物新メニュー提供があまりにエグい、というのが今まで我慢してきた従業員がプッツンした理由だ。

丼を二つ乗せたトレーを両手でバランスよく持ちダッシュで安全お客様の元へ運ぶことを強いられる環境下にあって、このメニューの登場は致命的であるファミレスなどとは違ってゆっくり歩いての接客はマニュアル違反となる。とにかくスピードを求められるのだ。

準備に時間がかかり火を使い危険、だというのにこの業界の客というのは5分待たされただけでキレるときたもんだからたまったものではない。一人勤務にされる深夜などは立地により終電後に大量の来客があるため、一人で仕事をしている中この鍋物メニューの注文が相次いだとなればまさに地獄絵図である。(ただでさえ深夜は清掃や配送された食材の受け取りなどこの時間限定の業務が多い)

加えて、自分が働いていた付近店舗情報を記しておこう。

基本的に人手が足りなかったり、退職者も多いため近隣他店舗へのヘルプ要請は多い。まあこれについてはどこでもあることだと思うのだが、そこはA丼屋。ヘルプで入ったら勝手のわからないその店を高校生が一人で営業していた、なんてこともある。

ヘルプで行ったまた別の店舗、こちらはエリア内でもかなりの大型店舗で、熟練者も多いところ。ここでは税金対策のため、多くの従業員仮名を使い籍を二つ有していた。え?いいの?それ。。とにもかくにも滅茶苦茶に忙しい店舗であり、だいたいみんな働き過ぎである

他にも別店舗彼女を作った店長が会う時間を作るために深夜勤務をしなくなり必ず週1~2日の休みを取る中、副店長に深夜~午後などのハードワークで50連勤を押し付けるなど個人のパワハラなんかもあり、15名ほどいたアルバイト12、3名ほどがごっそり辞めた。まあなんかこれは企業というより個人の悪質性によるものなので趣旨からは外れるのだが…。

疲れ果てた末に、労働法とか、人的資源管理とかっていうものを調べてみたりすると、頭の中の岡村靖幸が歌い出す。

「どぉなっちゃってんだよ!?

いつだったか、近所に店舗のある別企業従業員自殺したという話を聞き、大手の飲食チェーンでは働くべきではないと胸に刻んだのだった。

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    この営業報告書には「労時売上」という項目がある。これがA丼屋のブラックたる由縁であると言って間違いはない。では、なんぞこれ。 先ほど営業報告書の記入項目に「その時間...

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    「労時売上」とあるが、人時売上という言葉のほうが普通かもしれない。 労働生産性は、従業員一人あたりが年間で稼ぎ出した付加価値≒荒利益高。人時売上を5000円、粗利益率を60%、...

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      人時計算なら、何も驚くようなことじゃないじゃん。 少なくとも、小売外食SEはアタリマエにやってることだろ?(SEは人月計算だけど、やってることはいっしょ。) 元増田は働いたこ...

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