2014-04-22

久しぶりに先輩に会ったらマルチ商法の勧誘員になっていた。

 この度、人生で初めてマルチ商法の勧誘を受けた。

 マルチ商法ねずみ講とも呼ばれ、「知り合いに商品を紹介すれば紹介料が入るからそれで儲けよう」と言った文句で高額な商品を売りつけられるものである。こういう商法で購入した商品は、購入しても知り合いを紹介できず、その結果大きな赤字を出してしまうことが多く、トラブルになることが多い。

 そんな商法があることは、僕も昔から知っていた。しかし、これはテレビ学校家庭科の授業の教材の世界しか聞いたことはなく、実際に体験することがあるなどとは思いもしなかった。そこで、マルチ商法実態をより多くの人に知ってもらおうと、ここに記事を書くことにした。やや、長文になりますが、お付き合い願いたい。

 4月上旬。これまでに働いていた職場契約期間が切れ、新しい職場も見つからないまま、無職になってしまった。このことをSNSで書くと、それを見たA先輩がこうコメントをくれた。

「俺が働いている会員制自習室を利用してはどうでしょう自習室には、いろんな職業の方が来られるので、話を聞くことで、新たな職を考える際の参考になるでしょう。」

 このようなアドバイスを受け、僕はその会員制の自習室に通うことにした。言っておくが、この会員制自習室マルチとは全く関係ない。至って健全施設である

 A先輩は、高校時代部活の先輩である。仲はどちらかというと良い方だったが、そもそも高校時代部活の集まりにはあまり参加しなかったので、顔を合わせるのは久しぶりだった。

 数日後、A先輩から、食事のお誘いが来る。そういえば、再会してから2人で食事することが無かったと思い、一緒に食事に行くことにした。

 「就職調子はどう? 何を目指しているの?」という話になった。実際の所、具体的な方向性はまだ定まっていなかった。ただ、数字を扱うことや論理的に物事を考えることは得意なので、プログラマーや経理の仕事がいいと思った。また、職業研究をしていくに連れて、会社経営者という選択肢もあるのではないかと思えてきた。なので、こう答えた。

 「プログラマーや経理の仕事ですかね。最近自分会社を立てるという道もあるのではないかと考えています。実は、昔は研究者を目指していたんですけどね。」

 A先輩はなぜか、経営者になりたいというところに興味津々なようだった。それから「どんな生き方をしたいか」とも聞かれた。この辺から空気が堅苦しくなったが、僕は考えながらもこう答えた。

 「うまく表現はできないけど何か人と変わっていたい。公務員のように、黙って仕事をしていれば、課長部長と昇進していき、定年で退職特に何もない平和人生だった。というのはつまらないと思う。」

 それに答えて、A先輩はこう言った。「俺もそう思う。やっぱり、会社歯車の一部として生きるのはつまらない。俺の尊敬している人物でBさんって人がいるんだけど、Bさんは自分でこんな団体を作ったそうなんです。」

 "一般財団法人 全国福利厚生共済会"

 そう書かれた名刺を渡された。恥ずかしながら僕自身、会社のことはよくわからないので、「一般財団法人」が会社を指す用語なのか、公共団体を指す用語なのか、同じ職業の者同士が集う任意団体を指す用語なのかが分からなかった。ただ、話を聞くに、どうやら、A先輩はこの団体所属副業として働いているらしい。そして、この会社(?)は、大企業が受けている福利厚生中小企業でも受けられるようにしようという理念のもと設立されたものらしい。

 福利厚生とは、怪我や病気の時に保険金が降りたり、子ども入学した時に祝い金が出たり、旅行の際に交通費が安くなったりするサービスのことである。お互いにお金を出し合って、困ったときはその集めたお金から補助金を出しましょうというのが福利厚生趣旨である福利厚生は加入する人数が多いほうがいいものができる。10から500円を集めて5000円の福利厚生を作るより、10000人から500円集めて500万円の福利厚生を作るほうがいいものができるである

 しかし、このような理論からすると、小規模な福利厚生には誰も入りたがらないことが分かる。それでは、福利厚生は充実してこない。そこで、福利厚生を広める人が必要となってくる。A先輩は、まさに、その福利厚生を広める仕事をしているそうだ。

 この時点では、僕はまだ、これがマルチ商法だとは、気付かなかった。

 A先輩は携帯電話の例を持ちだして説明し始めた。携帯電話がまだ普及していない時代(肩に重さ3kgの電話を担いでいた時代)は、電波が届く範囲も限られていたため、すごく使い勝手が悪かった。これでは、誰も買ってくれない。そこで、携帯電話を知人に紹介して広めた人には報酬として紹介料を得ることが出来るというシステムを取った。その結果、携帯電話は世の中に普及するようになった。携帯電話を広めた紹介料を今でももらい続けている人がいる。テレビによく出演している叶姉妹が実はそうであるらしい。(本当かどうかは定かではない)

 次に、コカ・コーラの例を持ちだした。コカ・コーラも、最初は知り合いを通して紹介してもらうことで、その名を広めたらしい。コカ・コーラは今では大企業だが、昔はお金もなく、宣伝費を削減するためにも、このような方法をとったそうだ。(こちらも真相は確かでない。)

 そして、このようなビジネス方法は「ネットワークビジネス」と呼ばれるものであると教えてくれた。ここまで聞いたら、さすがの僕も勘付いたので、こう言った。

「なんだか、マルチ商法みたいですね。」

 これに対して、A先輩はこう答えた。「よく似ているんだけど、これは『マルチレベルマーケティング』と呼ばれる、ちゃんとしたビジネス手法なんです。」と。そして、なんやかんやで、話を聞いてみないかと、A先輩がBさんの次に尊敬しているらしいCさんに合うよう勧める。その日は、暇だったので、会ってみるだけ会ってみることにした。もちろん、僕は半信半疑だった。むしろ9割ほど疑いの目で見てた。

 数日後、僕とA先輩とCさんで話すことにした。集合場所はいつも通っている自習室。そこから車に乗ること10分。小さい事務所のようなところに連れてかれた。そこに、Cさんがいた。Cさんは悪そうな人ではなかった。結婚もされている方で、青年会議所の職員をされているそうだ。さらに、自分会社も起こしたらしい。

 Cさんは、何やら抽象的・感情的な話をし始めた。「大きな夢はないか。」「お金を稼ぎたくはないか。」「自分会社設立したいとは思わないか。」僕は、生活に困らない程度の稼ぎさえあればそれでいい。職を探す際も、給料の額はさほど重要視はしていない。そう語ると、「金が入らないなんていう人は金に困ったことない人がいうセリフだ。」などと、金の大切さを力説し始めた。金の猛者というよりもむしろ宗教じみていた。

 そんな理念的な話はどうでもいいから、具体的にどういう仕事をすればいいかが聞きたい。僕が重要視するのは、感情だとか人柄ではなく、何もしなくても20万円手に入るのはどうしてかということにある。僕が、契約社員だった1年間、汗水たらして稼いだ給料の月額が20万円。それが何もせずに手に入るなど、考えられない。どういう仕組みなのか説明して欲しい。

 このような意味のことを僕が言うと、Cさんは「おかしいなー、みんな理屈よりも理念賛同して入ってくれるのになー」などと言いながら、仕組みを説明してくれた。

 まず、このビジネスをするためには、全国福利厚生共済会の会員になる必要があるそうだ。会員になると、全国福利厚生共済会の提供する福利厚生サービスを受けることが出来る。会員には「お客様会員(月額2800円)」と「プライム会員(月額4000円)」の2種類がある。お客様会員は完全にお客様だが、プライム会員は知人を紹介することで収入を得ることが出来る。

  1. イクスパンコミッション
  2. ダイレクトコミッション
    • プライム会員を紹介すると1人につき毎月400円、お客様会員なら1人につき毎月200円の収入を得ることが出来る。
  3. アシスタントコミッション
    • これはよく分からなかったんだが、講習会に参加するように呼びかければ報酬がもらえるというものらしい。
  4. ラウンドコミッション
  5. ウィナーズコミッション

このようにして、収入をあげることができる。ただし、このままでは無限連鎖になってしまって、ねずみ講防止法の取り締まり対象になってしまうので、上限は500万/月 と定められている。つまり、これは法律意味する「マルチ商法」とは異なり、ちゃんと法律に則った、いわば「マルチまがい商法なのだ

Cさんはさらに変なことを言い出した。この一言で、僕は完全に入会しない意志を固めた。

「実は、みんなには3口で買うことをおすすめしているのですよ。1口買って残りの2口を自分の紹介ということにすれば、非常に効率良く稼ぐことが出来るのです。」

 狂気じみていると思った。確かに、このように買えば、2人分の仕事で、4人分の利益が得られるだろうというのが予想がつく。しかし、3口買うことは投資が増えるわけであり、リスクも増える。何しろ、月会費を回収するために必要な紹介人数も増える。そんなことはできない。そもそも、僕はもっと堅実な生き方をしたい。人と違うことがしたいとは言ったが、借金をするリスクまでは背負いたくない。新しい発明をするとか、新しい商品を作るとかそういったことで活躍をしたい。念のため、このような質問もしてみた。

「今、この福利厚生共済会に入るとどんな福利厚生が受けられるのですか。」

 この福利厚生が、人に勧められるほど立派な商品だとしたら、プライム会員になってもいいと思った。しかし、カタログを見る限り、そう充実しているようには見えなかった。せいぜい葬儀費用が安くなることと、飛行機代が安くなることだった。葬儀なんてめったにないだろうし、飛行機だってめったに乗らない。とても、月会費の価値のある福利厚生だとは思えなかった。Cさんは、今は発展途上だから福利厚生がこれだけしかないのだと主張していた。これはもっともな意見かもしれない。だが、そうだとすると、僕が紹介すべきは、福利厚生が目当ての人ではなく、副業で稼ぎたい人を紹介する必要がある。残念ながら、僕の周りにはそんな欲深い人はおらず、ニート社畜しかいない。ニートはそもそもそんな資金を持ってないだろうし、社畜お金なんかよりも休みが欲しいだろうと思う。

 念のため、家に帰って月会費を回収するためには何人紹介すべきかを計算してみたら、10人紹介しなければならないという計算になった。この10人には、自分の直紹介だけではなく、自分が紹介した友達が紹介した人(孫の関係)やその友達が紹介した人(ひ孫の関係)も含まれる。10人を紹介するのがどれだけ難しいことか僕には理解しているで、僕はそんなものはやらない。

 A先輩にメールで、断りの連絡を入れた所、「計算が間違っている」とか、「才能があるのに勿体無い」とか、「リスクはないんだけどね」と、いろいろ長電話になって引き止められた。最後に、できれば代わりの人を今度の説明会に連れてきて欲しいと言われた。頑張ってみますとは言ったものの、そんなの誰も来ないでしょうと思った。来るとしたら、マルチ商法リアル実態を体験したい物好きくらいだろうと思う。もっとも、僕も、ここまで話を聞いたくらいなので、相当物好きだと思う。

 さて、ここでこの一連の事件を通じて気づいたことを書くが、「A先輩には悪いことをしているという実感がない」ということ。マルチ商法の勧誘に困ったら、「そんなの無視すればいい」とか「こんなの紹介してくる人なんて友達でも先輩でもなんでもないです」と言う人がいる。しかし、おそらく、A先輩も悪気があってそんなことをしているわけではなく、むしろいいことをしているという気分になっていると思われる。A先輩はすでに「会員になって福利厚生を広めるのが自分の使命なんだ」と洗脳されている。生き方が云々かんぬん、ビジネスが云々かんぬんと言い出したのもその影響。さらには、異様なほどに幹部の人を尊敬しているのも、組織が持つピラミッド構造の影響。そう考えればすべてのつじつまが合う。これらは一種の新興宗教のようにも思えて、非常に気持ちが悪いと思った。

 今後、A先輩とどう付き合っていくべきか。縁を切るのか、辞めさせるのか、そのまま放っておくのか。それは僕の課題になる。

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    マルチじゃなくて宗教だけど 昔アルバイトしてた所をやめる3日前に いつも同じシフトに入ってたオバちゃんと休憩室で2人っきりになった。 そしたら宗教について語りだしておもむろに...

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    きちんと計算とかされていて面白かった。 説明も上手いので、堅実な仕事で上手くいくと思う。 仮に同僚があなたなら良いなって思ったよ。頑張って!

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    MLMと聞いてすぐマークパンサーを思い出したけどもう7年前なんだな

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