2014-02-17

おいしそうにごはんをたべることだけが彼女の魅力だ

俺の友だちの唯一の長所ごはんを食べることだ。彼女はとてもおいしそうにご飯を食べる。

奴とは共学だった高校で席が近かったから仲良くなった。

たまに呼び出したり呼び出されたりして、カラオケしたり、遊びに行ったりしている。

あの時はチンチクリンだったが、大学卒業しようという今では、なんか成長している。色々。

「ねー、お腹すいたんだけど?なんとかしてよー」

映画館で席について、いよいよ上映開始、旧態依然としたビデオカメラを頭にかぶった男が”No! 映画泥棒!”とか言い始めた段になって、こいつはこういうことを言い出す。

本当にクズだ。仕方なく無言で自分キャラメル味のポップコーン差し出してやる(奴のは既に空っぽだ)。

大体において話していても大したことを言わない、ボンヤリしたやつだった。おまけに鈍くさかった。

大学講義レポートを出さなくちゃならなくても、ギリギリになって泣きついてくる。

俺はあまり勉強はできる方ではなかったから、二人でよく遅くまでファミレスで頑張った。

あいつは頭は良かったので、コツを教えるとすぐに飲み込み、てきぱきとレポートを終わらせてしまい、俺が頑張っているのを横目に奴はパフェうつつを抜かしている、ということがよくあった。

納得がいかないが、あいつと一緒にいると、こっちはドリンクバーだけで粘っていても全然文句を言われないので、その点は助かった。奴はよく食うのだ。

そんなあいつが目の色を変えたのは、俺がとっておきの料理を出した時だ。

「なに?たまごご飯はフツーがいいよ。熱々ごはんたまごをかけて、バターを載せて、醤油をちょこっと。王道が一番だって…」

タッパーに入れられ、茶褐色になっている卵を見て、あいつは目を潜めてそう言った。

「まあそう言わずに食ってみろよ」

冷蔵庫からとり出した卵は、俺が3日掛けて作ったものだ。

と言っても、やることは簡単で、まず白身を除いてタッパーに入れ、醤油みりんを1:1の割合で注ぐ。黄身がひたひたになるまで加える。

冷蔵庫で寝かせ、3日たったら取り出す。

そして熱々のご飯の上に載せる。

漬けられて茶褐色に染まった卵は、半熟卵のようにすこし固くなっているから、混ぜたりはしない。崩しながらご飯と一緒にいただく。

このシンプル料理は、”卵黄の醤油漬け”と呼ばれる。ネットで知って以来、俺はたまに作って、客に振舞っている。

しばらく黙って食べていた彼女が、沈黙を破る。

「ふ、ふおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおwwwwwwwwwwwwww

なにこれぇ、、な・に・こ・れぇえええええええwwww」

必死になって、がっつく彼女。よく見ると目に涙が浮かんでいる。

付け合せに作ったトンカツキャベツ味噌汁もどんどん減っていく。これは急いで何か追加を作ったほうがいいかもしれない。

「美味しい!美味しい!!あんた、あたしに、こんなに食べさせて、豚みたいにぶくぶく太らせてとって食べる気でしょw」

おかわりのためにお椀を差し出しながら、礼もろくすっぽ言わずに、あいつはそんなことを言った。

「いや、お前はちょっとは痩せろw運動しろw」

そして、俺のメシをたらふく食え。心のなかでそう付け加えた。

決めた。今度、告白する。

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