2013-09-26

落し物を落とした事にすら気がつかなかったボケ女の話

ある雨の日に出掛けようとしたとき、初めて異変に気がついた。

地味な傘ばっかりささってる傘立てを華やかにしているはずの一本のピンク日傘がそこにない。

何故?いつから?ここじゃない家の中のどこかにあるのか?

ないと困る。母親に買ってもらったそれなりの値段がするブランドものの傘である

しかし傘立て以外に傘が収まる場所はこの家にはない。

失くした?いつ?どこで?

心の奥から絶望感がジワジワと拡がっていく。

申し訳ない気持ちや、怒られる恐怖や、喪失感、

何より失くした事にすら今まで気がついていなかった自分脳みそにただ、ただ絶望する。

何故こんなことに。

いつどこで失くしたかもわからないものが、見つかるとは思えない。

もうダメだ。

良くないこととはわかっているが、この事実隠蔽したい。

同じものを買う、とか。買えるのか?セール品だったのに?

とりあえずブランド名で検索、財布やら何やらは出てくるけど傘の情報ほとんどないし、

同型の商品の情報は何もない。Amazonにもない。

もうダメだ。

この不良品で使い物にならない脳みそをもう一度使って考えてみる。

何処で失くしたか

そもそも最後に使ったのはいつか。

基本的に折り畳み傘を使うし、自転車での移動が多い。

使うとしたら電車バスの移動のときだ。

電車の中、バスの中、飲食店などのお店の中

この3つが忘れる可能性が高いと思われる。特に前二つが可能性として考えやすい。

電車は何線なのかわからないが、

最寄り駅沿線が一番可能性が高い。

鉄道会社ホームページを見ると3日保管後、警視庁遺失物センターに保管されるとある

警視庁遺失物センター…どこで落としたとしても最終的にそこに集まるのか?

だとしたら最初からそこに問い合わせれば事足りるのではないか

しか飯田橋遠いし、手続きに時間かかりそうだ。

なんせこの大都会東京のあらゆる場所からの遺失物が集まるところなんでしょ??

傘なんて何万本あるんだ?

もう一つの可能性、よく使うバス会社ホームページを見てみる。

遺失物は営業所で保管。営業所は近いぞ!とりあえず営業所に行ってみるか近いし。

バス会社営業所に行ってみた。

窓口が非常に狭い。客が2人いたら満員である

窓口のお兄さんに用件を伝えると奥にいったっきり暫く出てこない。

「いつ頃失くされました?」

「えーと、結構前で、先月末、多分20日くらい…」

今更なう曖昧でなんとも恥知らずな客である

「色は?」

ピンクです」

しばらくひたすら記録簿のようなものペラペラめくってる。

ああ、ごめんなさいごめんなさいもういいです諦めます

「あの、ない、ですよね?」

「いや…」

(いや?)

「一件だけそれっぽいのがあるんですよね。骨は多いですか?」

骨の本数なんて覚えちゃいないが(聞かれるとは思わなかった)

造りはしっかりしてるので普通の傘よりは多いかもしれない。

普通のよりは多いかもしれないです。」

「なるほどね」

骨の本数なんて記録してるんだろうか。特徴のポイントとしては盲点だった。

「30日に届けられたもので、日傘じゃなくて普通の傘として届けられてるのですが、取手薄茶色で、リボンの留め具が付いていませんか?」

!!こっちが伝えてない特徴が出てきたぞ!これは期待できるかもしれない。しかし30日って!全然違うじゃないか自分

「そうです!」

警察署に届けてあるのですが、結構前なので、さらにそこから飯田橋の遺失物センターに送られてるかもしれません。とりあえず問い合わせてください。」

受領番号、管理番号警察署電話番号が書かれた手書きのメモをくれた。ありがとうお兄さんありがとう

しかしこれが本当に私のものじゃなかったら?また振り出しに戻る事になる。まだ喜べない。

ここは電話するスペースもないし、天気も悪かったから、駅まで行ってから警察署電話をかけてみる。

若い女の人の声で、たどたどしく対応してくれた。即刻伺うことにした。

警察署に行くのは免許証の住所変更のときに来て以来である。確かに遺失物コーナーみたいなのがある。

カウンターではおばちゃんがぶっきらぼうに対応してくれた。

ほいさ、と出てきた傘は私が求めていたそれである。おまえこんなところにいたのか!放っていてゴメンよ!

遺失物届出書っていうのと、受領書っていうのの2つの書類を書かされた。

この遺失物届出書っていうのを書くのがまず最初にやるべきことだったのかもしれない。

見つかってから書くのも変な感じである

やがて雨が止み、傘を2本持って街を歩くボケ女の姿がそこにあった。

我が家の傘立てに華が戻った。

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