2013-05-17

かつて、私の隣にSQL魔女がいた

今日プロジェクト打ち上げがあったのだが、とあるサプライズ……三ヶ月前に寿退社した先輩との再会に思わず涙ぐんでしまい、ひどくばつが悪い思いをしている。今も顔の火照りが抜けてくれない。アルコールは抜けたのに。彼女はかつてSQL魔女と呼ばれていた。

から遡ること一年前、私は辞令を貰い、二年目にして事業部ごと変わるという波乱をようやく乗り切って、業務系のSE仕事内容、特にWebアプリレイヤーについてOJT形式で学んでいた。そこで先生にあたる方として付いたのが、ちょうど手待ちだった先輩である。初めてお会いした時の先輩に対し、私は正直ちょっと物足りなく感じていた。

初日に行ったPCのセッティングでは、これやってと先輩から資料を渡されたのだが、外部にネットが繋がらない。先輩に相談して弄ってもらったのだけど繋がらず、今日は社内ネットで我慢して、と言われてから二日後、資料が古かったことが判明。

与えられた課題を終えるごとに、コードを提出するのだが、見たよ〜出来てると思う、頑張ったね〜と言われた後で、そのプロジェクトを下敷きに発展課題に足を進めたら、でっかいバグがあったり。

万事その調子で、今やってる課題放り出して、プロジェクトオイラーの問題でも解いてた方がよっぽど楽しいなぁと若干サボりたいと思い始めた頃、炎上プロジェクトへ先輩と二人テスターとして出向するよう、上司から命じられた。炎上プロジェクトリーダーから手待ち要員いない?と声がお上に届き、降りて来た結果先輩と自分がいたわけだ。

前の事業部ではずっと同じ客先にいたわけで、頭では分かっていても鼻先三寸で飛ばされることには不安がつきまとった。

「これから行く先はどうなんでしょうね?」

先輩へ問うと、

「基盤にいたんでしょ。メインフレームが扱えるなら大丈夫だよ〜」

豆腐すらぷるぷる震えそうな声が返ってきた。

この時の私は、まだ事業部を転属して間もなかったし、プライドばかり高くて奢ってたように思う。事業部を変える→入社して以来の経験値がまた0に、と失うことに対する不満ばかりで、それが拗れて数少ない基盤系経験アプリ開発者、そんな肩書きばかりを強調する変人に成り果てていた。自己紹介で、どうも、基盤から参りましたと、そこだけは大きい声が、今思い出したけどマジで恥ずかしい。

から、だろう。このゆるふわな先輩とドナドナされることに密かに感じていた屈辱には、出向いた先で押された駄目テスターという烙印によって罰があたることになった。

その理由は、私がSQLを全く使えなかったことにある。テスターとして行うことになったのは表示画面の統合テストで、UI検索結果とデータベースに直接SQLを打ち込んで得たレスポンスを目で確認していく作業だった。UIは、境界値さえ気をつけて、仕様通りに実施すれば何とかなる。しかし、SQLで再現が出来ない。この仕様はどうやったらコマンドに落とし込めるんだよ。頭を抱える中で思い出したことがあった。

教育過程Javaサーブレットを学んだが、その一つにJDBCも勿論習った。そこで私は何をしたかmysqlに繋げればそれでいいやと、エグゼキュートで実行する際に渡す魔法文字列……つまりSQLの中身は、すべてコピペで済ませていたのだ。社内教育資料を内部作成するにあたり参考にしたと思われるネットから……構文チェック効かないし、ここは手を抜いてもいいだろう、これが要領の良さというものさ……アホーアホー私のアホー。

三日目の午後二時、進捗を確認しに来たPMにすべてを告白すると、ちょっと来てとPMが連れ出したのがあの先輩の席だった。

「申し訳ないけど今やってるテストは止めて、これから定時いっぱい最低限テストが出来るように彼にSQLを教えてやってくれ。」

良いのですか?と顔をあげるとPMは何を勘違いしたのか、やにわに私の肩を叩くと、

彼女SQL魔女と呼ばれている。半日でお前も即戦力だよ。」

と去っていった。顔を先輩へ戻すと、あのPMさんは嘘つきだから信じないほうがいいよといつものふわふわした声でにっこり。

宜しくお願いします。ノートパソコンを横に私は型通りの挨拶。四時間後、私は傲慢さを、尻の毛まで抜かれることになる。

私はSQLの深さを知った。SQLのQとは何だ?Queryであります、サー!!今も時々夢問答を繰り返す。そう、全ては問い合わせ次第なのだ。今思えば、あの時やったことはT2テストを使ったSQL文の作成添削しかSELECTによる条件抽出のみだったが、そこに全てが詰まっていた。

DISTINCTとORDER BY共存で詰まってわけがからなくなったコードは、もっとシンプルにいけるよと副問い合わせに書き換えられて。ネストワイルドカードを多用してスパゲティになったコードを、先輩はLEFT JOINとWHEREとORで全てをすませた。

なんということでしょうマニキュアが塗ってある長い爪から想像もつかない早さで直されていく構文に脳内で途中から匠の曲が流れ始めたのを覚えている。本当に、なんということでしょう。先輩はSQL魔女だった。

翌日、先輩の教えはしっかり自分に身に付いていた。すらすら書けるSQLサクサク進むT2テスト。条件設定に悩んで、エクセルに吐き出してからリストコピペで逐一加工してた時間馬鹿みたいだった。先輩のところへ、帰りしなに昨日のお礼と作業進捗に激震が走ったことを伝えると別にお礼なんていいよーといつものふわふわした顔で微笑んでくれた。

それから先、配属先が決まるまでの条件付きでテスターとして入っていたはずだったが、T2試験が終わり、T3試験が始まってもなぜか私はそのプロジェクトにいたままだった。DB担当者として。もともと基盤だったわけだし、バッチファイル処理でスクリプトがそこそこ書けたというのもあるけど、SQLが書けたというのはすごく大きい。昼休み、いつのまにか私はプロジェクトオイラーの問題に代わって、名著「SQLパズル」を解くのを日課としていた。

先輩は仲良くなる暇もなく、その後すぐにプロジェクトを移り、メーリングリスト寿退社を知った。炎上したプロジェクトは、なぜか横展開を経て今に至り、私は相変わらずここにいる。だが、あの時SQL魔女がかけた呪いは今もしっかり私に根付いている。

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    あらいい話

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