2013-01-26

軽減税率はあくまでも増税のための道具という基本を踏まえるべき

http://anond.hatelabo.jp/20130126034809

軽減税率は、逆進性改善のために行っているわけでは無い、それを目的にしてはならないと言う事は日本生命のレポートにも出てくる。一部引用

英国イタリアカナダ訪問した際に、0%税率や軽減税率運用、あるいは給付制度を導入した目的を各国の財務省担当者から聞いた結果は、実に意表を突かれるものであった。英国イタリア財務省からの回答の趣旨は「0%税率や軽減税率適用する財の基準は、国民生活にとって最も必要かつ重要な財であるかどうかによる」とのことである。こうした財について国民負担を軽減するのが、0%税率や軽減税率役割だという。同じ考え方により、非課税扱いが適用される場合もあるが、それらの措置に逆進性への配慮を重視するとの理由付けは得られなかった。

そして最後こう結ばれる。

EU諸国カナダなどでは、こうしたプロセスを通じ、国民の理解を得ながら政治的に困難な増税を実現してきた経緯がある。

要するに、国民増税を受け入れさせるためのカードとして、軽減税率運用せよと言っている。国民生活必要重要な財というのはつまり、基本的には多くの国民がそう思うと言う事でしか無い。お上がこれが重要な財であるからと言っても、民主主義国家でれば選挙によって否定されることになる。

国民が納得をするように運用を行う事が増税を実現するために大切であると言う事だ。ここで大事なのはある理論では正しいという仮説レベル合理性等と言うものではなく、ましてや

贅沢品やレストランエコカー省エネテレビ軽減税率をかけろという、おそらく軽減税率の信奉者が受け入れらない結論

などと言う世論調査で実に8割を占める人間が受け入れられない結論ではない。増税を納得させるための手段である

仰るとおり、最後納得させるのは確かに政府仕事だが、8割以上が受け入れがたい理屈を一つ一つ説いていくと言うほぼ不可能な作業の実行責任政府に押しつける事は間違いである。それは経済学に対する批判でしばしば登場する

世界規模の恐慌を引き起こすのを経済学者専門家)たちは防ぐことができないし、その破綻責任をとらないだけでなく、シャーシャーと「やり方が足りなかったからだ」と居直る始末

と言った批判に繋がる。同種の批判は何度も繰り返されており、今回の政府の責任であると言う事は結果は理論の正しさに影響しないという責任逃れの予防線につながる。(そういうつもりで言ったのではないとしても、経済を論ずる上での習慣としてこういった事が根付いているのは間違いがない)

軽減税率の用い方は、ある理論では合理的であるが、支持を集められない理論を納得させてまで学問合理性を追求することではない。

あくまでも、軽減税率増税を受け入れさせるための道具であると考えるべきだ。これが現実路線では無いか

追記 これをもって逆進性対策は何が良いかを論じているものではない

どうもこれをもって、消費税の逆進性対策には軽減税率は使えないと言うことが証明されていると考えている人がいる。

例えば

b:id:piccad

逆進性対策は軽減税率の理由に使えないことが浸透してきた模様

これは典型的勘違いだ。理論人間が動くわけも無く、現実政治とはそう言う者であると言うことを分かっていない。非現実的というか、机上論で美しい論だけを追い続け、どうやって実現したら良いか、現状を踏まえてこれからどのように政治が展開するかと言う事を考えない典型的な机上論者である。おそらくこのエントリーを自らの主張に合致する部分しか読んでいないのでこのような事を書いてしまうのだと思うが、それでは実効性のある考えはできない。

まずは、そんなことは日本生命レポートでも、このエントリーでも言っていないことに注意するべきだ。日本生命レポートでは、政府上層部担当者がどう認識し、どのような基準で制度運用しているかという事を示しているだけに過ぎない。国民がどう認識しているか、どう受け止めているかと言うことが民主主義ではよくも悪くも大切であり、国民が逆進性の対策のために軽減税率・複数税率を導入するべきであり、それを条件に消費税増税を飲むと言う世論であるならば、それは立派な軽減税率導入の理由になり得る。学者はこういう時は「説明すれば浸透していくはずである」という事を言うが、そんなことは少なくとも消費税増税には間に合わない。

このツリー以下で討論が行われており、一通り眺めたが、このような分かりにくい議論を一つずつの国民に対して、長々と説明して回るつもりだろうか。そしてそれらを全国民とまでは言わないが、ある程度政治に関心のある層すべてに行う事が可能であると思っているのか。ごく僅かなある解釈と基準によってのみ生み出される例外を頼りにしている。そしてそれらに対する率直な疑問においても、特殊な理論を使わなければ反論もできないが、その理論国民に説明して回るつもりなのか。もしも直近の、消費税10%にしなければならないとしている期間までに可能だと思っているとすれば、それは妄想であると言わざるをえない。経済学モデルでは人民はある統計理論に従って均質に分布するとしなければ理論構築が難しいが現実はそうではない。

消費税はそもそも、タックスヘイブンなどを利用した国際的節税策、経済学者が従来構築してきた経済モデルというもの存在しなかった存在によって租税回避が行われるようになってしまい、経済学者理論の行き詰まりから生まれたものである。どうしようも無いから、マネーフロー税金をかけるしか方法が無いとして強化されてきた。しか経済学視点から見てもこれは欠点が有り、逆進性という事が生まれてしまう。これは富豪でも1票、貧困者でも1票と言う等しき手段においてコントロールされる民主主義において、不公平感から支持者の取り込みが難しくなると言う問題にも繋がったことでクローズアップされた。

このままでは反対にあって消費税が導入できない、しか経済学者はそれ以外に有効な手段を提示できないと言う中で、苦肉として生み出されたものである。それが当初軽減税率であった。故に、全てが根本的に消費税を受け入れさせるための理由付けに過ぎない。

では何故給付にすべきだという理論が生まれたのかと言えば、これは経済学自家中毒のようなものであると考えられる。経済学だけで解決策を見つけられないと言う中から生まれたマネーフロー課税という対策に対する反発に対応するために、軽減税率と言った方策が生み出され世界各国で導入された。しか経済学者はその本来の目的であった「消費税を受け入れさせるための取引材料」というを踏まえずに、その効果を自ら測定して不可判定をし、その不可判定に伴い新たなる案として給付という手段を生み出した。しかし生み出されてからここまで、これが有効だという事もまだ証明されていない。すると彼らはいくつか資料を出してくるだろうが、軽減税率に対して行ったように批判的な立場からそれらを分析したものはまだ分析出来るほど事例が溜まっていないこともあり存在しないのである。ただし、今の時点では存在している有効だと論ずる資料に対し、給付有効だという実証がまだ済んでいないことを理由として給付は役に立たないとするつもりは無い。しか自家中毒のようなものに付き合う時間が無い事は確かであって、それが証明されていないのであれば今は経済学理論はともかく、政治としてマネーフローへの課税しか今後有望な新規財源が無いと言う現実を踏まえて現実的に動くべきだ。

現実とは軽減税率が一番シンプルに反発を抑えられる手段であると言う事である。少なくとも、システムを構築し作り上げたとしてそれで消費税増税を受け入れさせることができなければ意味が無い。ましてや、実証されていない給付によって軽減できるという理論を実現するための実験場に自ら志願するだけの余裕は無い。経済学者軽減税率によって逆進性を改善でき、マネーフローに課税することによって安定財源とする事ができるとして、消費税増税を唱えてはみたものの、今となってはそれは間違いであったとして学説を取り替えたように、これがいずれ間違いであった、当時は優勢な学説でありその後経済政治環境が変わったことが無効になった主因でとして学説を帰れば良いだけかもしれないが、現実はそこに常にコストが発生する事になるのだ。

責任逃れの予防線をはったような経済学的に正しいいが実現不可能な理論に付き合う時間も、井の中から見える世界事実を都合良くつまみ食いした蛙にも付き合う時間はない。

記事への反応 -
  • 消費税の優れた点は 消費税の利点は課税対象の広さ。税逃れが相対的に困難。また、所得は少ないが貯蓄で余裕のある引退世代にも社会保障費の増分を一部負担してもらえる(給付付...

    • 軽減税率にも擁護論はある とはいっても推進派にとっては残念ながら、逆進性の改善によるものではない。 軽減税率の逆進性改善の有効性の低さは折り紙つきで、かつ費用ばかりかさ...

      • http://anond.hatelabo.jp/20130126034809 軽減税率は、逆進性改善のために行っているわけでは無い、それを目的にしてはならないと言う事は日本生命のレポートにも出てくる。一部引用 英国やイ...

        • 世論調査で実に8割を占める 当時は軽減税率に関する知識がみんなあったかな? 食料品は税金が低くなることに賛成ですか?とだけ聞かれれば多くの人が賛成するのはアタリマエ。 ...

          • http://anond.hatelabo.jp/20130126215752 具体的な世論調査の数字を上げているのにそれを否定する材料が憶測と「説明すれば説が正しいと誰もが気付くはずである」という奢りと言うのはいただけ...

            • 自民党・公明党は政権公約で軽減税率の導入を公約に掲げ大勝しています。これが直近の民意ですよ。 これが通るなら今ごろ消費税が引き上げられてない

              • その結果消費税増税を実行した民主党は、自民党に政権公約に違反していると突かれて選挙に大敗したわけです。三党合意で自民党は同意していたにもかかわらず。 安倍政権がそう言う...

                • 民主党の公約違反は消費税だけでなく主要な政策はほとんどできてないレベルだったから3党合意あろうがなかろうが関係ないだろうし 安倍は前回郵政民営化で圧勝した議席を受け継いで...

                • その価値があるような事にも思えない。 ぼくは価値がないと思うぞ、というだけの意見を他人への説明に使うなんて

            • 消費税に対する軽減税率論では、高い消費税を導入している国で軽減税率を導入していない国がほぼ無い事実 近年、付加価値税を導入もしくは引き上げた国では2桁税率でも、軽減税...

              • むしろゼロ税率があるのに単一税率だと言っちゃう事の方が驚きだよ…。 いくら何でも無理があるでしょ。

                • ゼロ税率を入れないと中間財への課税の還付ができないからなんだが・・・ 最終財以外は課税しないというのが付加価値税で、本来非課税の中間財を 単に非課税として税の枠組みの外...

                  • オーストラリアもニュージーランドも、食品や住宅費など税制上の都合以外でも0なんだが。 オーストラリアは「導入時に様々な議論がなされ、食料品などの基本的な生活必需品や教育費...

                    • 日本でも家賃や個人での住宅譲渡などでは消費税がかからない。 またオーストラリアの食品は確かに一部が例外的に税率が0%だが、ちょっと特殊で普通は単一税扱い。たとえば http://www....

                      • 食品が対象に含まれているのは大きな違いだろうに、都合の悪いところを全部例外にしていけばそりゃ何でも意見に合うわなあ…。 てか、参照してたのがマーリーズレビューだったのか...

                        • 軽減税率の話でマーリーズレビューすら知らないようでは話にならんでしょ。 そして、あくまで一般にオーストラリアは単一税国に扱われるという例であって、 sをの中身が正しいと...

                • 日本も医療とか別扱いだからすでに軽減税率導入済みだと言えるな

                  • 日本も医療とか別扱いだからすでに軽減税率導入済みだと言えるな まったくもってその通りだな。 そして軽減税率の事務上の問題が既に出ている分野でもある。 消費税導入からか...

                    • それこそ軽減税率が全面導入されてゼロ税率の運用ができる様になったら改善するんじゃないの?

                      • 何を根拠にそんな妄言を。 税率が異なることによる問題だから、複雑になりこそすれ解決なんてしない。 規模のメリットが働く話でもない。

                        • 根拠も何も、当人の医師がそう言う運動をやってるんだけど。 ここには「特別複雑な計算でなく青色申告者であれば容易にできます。」って書いてあるけど。むしろ「複雑になりこそす...

                          • それニュージーランドでゼロ税率がある理由と同じなんだが。 いま非課税のものをゼロ税率にするのは是非やるべきだが、それは軽減税率とは異なる。 少なくとも、普通の人が賛成す...

                        • 横からだが、いまって税金が違うのは 土地 タバコ ホテルの宿泊 金 医薬品 なのかな? 探せば消費税意外に税金がかかって、もしくはかかってなくて、もしくは特殊な税制をしているの...

                    • それこそ軽減税率が全面導入されてゼロ税率の運用ができる様になったら改善するんじゃないの?

                    • 医療は公定価格だから全国同一価格で価格変動も少なく公的保険だからどれくらい売れたかもチェックもしてるが 価格変動が激しく店によって違う食料品でやったら相当大変だろうしイ...

            • 自公が選挙で圧勝したのは事実でもそれが軽減税率のおかげだという根拠にはならんだろ しかも得票数は下野した前回より減ってる それに軽減税率の導入も現段階では今までと同様にま...

            • へ? http://anond.hatelabo.jp/20130126224437 消費税に対する軽減税率論では、高い消費税を導入している国で軽減税率を導入していない国がほぼ無い事実や、日本生命のレポートにある事情など...

              • まず、増田でよく陥りがちな現象だと思うが、議論に参加している人は複数人いると言う事を考慮したほうがよい。 それから引用されている記事を書いた増田としては、 「日本でも生...

                • 別に給付付き税額控除も一律給付も現実的可能性が高い、 というより目下、軽減税率より先にラフな形とはいえ採用されることになっているのに、 それに対して現実的に可能な事を考...

                  • インボイスがないと複数税率にした場合に大企業が納税事務で死にそうになるのはわかるが インボイスを導入してもその事務が増えることになる上に 特に中小企業は簡易課税制度が有...

          • http://anond.hatelabo.jp/20130126215752 http://www.j-cast.com/2013/01/24162520.html サンプル調査では回収率が重要。 2012年11月に実施した軽減税率導入についての調査結果では質問した4000人のうち2790人が...

        • >あくまでも、軽減税率は増税を受け入れさせるための道具であると考えるべきだ。これが現実路線では無いか? だからこそ「やるやる」と言って増税を受け入れさせておいて実際はや...

          • 選挙の時、政権公約を破った事を批判して大勝した自民党が、次の選挙で巨大なブーメランになりかねない事をするとは思えないけど。特に安倍晋三氏は2007年の選挙の時、消費税増税問...

            • 竹島の日のように「後でやる」と言って結局やらないパターンだと思うが 選挙まで半年だから法改正が必要な軽減税率は「後でやる」と言うのはもっと不自然さがない それに2007年は消...

      • 軽減税率なんて、基となる消費税率が20%とかでもなきゃ、手間がかかるだけだろ たかだか数%の税率差のために、手間かけてたら手間のコストの方がはるかに高い 10%以上とかの税率...

    • http://anond.hatelabo.jp/20130123154647 すごいブクマが付いてる。 でも、消費税の利点についてまとめたところに『消費税には欠点がある。許さねえ。』的なコメントが多くて残念。 別に全て...

    • 日本でも採用すべきってことじゃないよね。 軽減税率をいったん導入してしまうと簡単にはやめられないってことだよね。 裁判が起こったりして問題点が人々の目にも明らかになり、 ...

    • こんな所でコソコソやってねーで、 議員に資料提示して訴えかけたりした方が良いと思うのね〜

    • 軽減税率にも擁護論はある とはいっても推進派にとって残念ながら、逆進性の改善によるものではない。 軽減税率の逆進性改善の有効性の低さは折り紙つきで、費用にぜんぜん見合わ...

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