2012-08-17

結局は、まだとらわれているという話。

今朝目覚めたときにふと思い出して嫌な気分になったのでここに書く。



中学生の頃の話だ。

おれはクラスでは目立たない地味な生徒だった。

そもそもクラスで目立つのは、運動ができたり勉強が得意だったりイケメンだったり……まあそういう生徒なわけで、

そのどれでもないおれはクラスではすこし浮き気味の存在だった。

かといっていじめられていたわけでもなくて……。

地味なおれは同じように地味な子と友達になり、ひっそりと毎日を生きていた。

それでよかった。とくにクラスの人気者になりたい・目立ちたいという欲はなかった。

ただ毎日ふつうに静かに生きられればそれでよかった。


地味すぎて、二年生になっても三年生になっても、理科教師(担任ではない)に名前を覚えてもらえず、

たまたま「肌が白い」ことが共通していた別のクラス男子(××)の名前で指されることが何度もあった。

そのたびに「いや~お前肌が白くて××と似てるんだよなぁ」と笑われたりして嫌な気分になった。

ちゃんと毎回授業に出ているのにね。

クラスでも「ちょ、こいつまだ名前覚えてもらってないのかよ(笑)」みたいな空気になって、とても恥ずかしかったことを覚えている。


さて、ここからが本題。

中学3年生になり、クラス替えがあった。

クラス替えの紙を見て、おれは愕然とした。

おれの在籍することになった3年3組のメンバーは、

見事に上で書いたような、いわゆる「運動ができる奴・勉強ができる奴」で固まっていたのだ。

おれと同じ地味な生徒はおれも合わせて4人だけだった。男子20人中4人……1/5。

そう、3年にもなれば、同学年の奴のことはだいたい把握しているものだ。おれだけでなく、

もうみんなそういう区別がつくようになっている。できる奴かできない奴か、どのグループ所属しているのかなど……。

それをさらにおれに思い知らせるように、

隣の3年2組の「運動ができる」男子がやってきて、3組のクラス表を見ておれにこう言ったのだ。


「いいなぁこのクラス体育祭とか圧勝じゃん。すげー楽しそう。なぁお前、おれと替わってくんね?」と。


おれの顔は確実にひきつっていたと思う。いや、替われるなら替えてほしいくらいだ、と思ったのも確かだ。

そして、それよりなにより、やはり誰が見てもそういうふうに映るのか、と悲しくなった。

おれ以外の地味な生徒3人も憂鬱な表情を浮かべていた。

そんなわけで、

おれはこの中学最後一年間、このクラスでやっていける自信はまったくなかった。

授業の合間の休み時間は、教室を離れて誰もいない所に行くか、机に突っ伏して寝るフリをするかの二択だった。

たまに、気まぐれにおれにちょっかいをかけてくる4/5の連中が嫌で仕方なかった。

向こうからしたら「かまってあげてる」程度の認識だったのかもしれないが。



そんなおれでもなんとか毎日ひっそりと学校生活を続けて……(体が弱いということもないので、毎日学校に通っていた)、

6月に入り、京都奈良修学旅行を迎えた。

修学旅行は基本、班行動であり、その班構成によって修学旅行のすべてが決まるといっていいだろう。

おれはおれ以外の地味な3人と同じ班になることもなく(最初から諦めてたけど……そんなうまくいくわけがないって)、

気が合わない、ほとんど話したことのないヤンキー(でも運動ができてイケメン)とデブ(太ってるけどクラスの人気者)と同じ班になった。



修学旅行当日。

事前に立てた計画通り、この班でいくつかの寺社を巡った。

雨が降っていたな、そういや。

今ならもっと楽しめるのだろうが、当時のおれはお寺とかそういうものにまったく興味がなかったので、

なんで京都まできてこんなところ歩かなければいけないんだろ、と思っていた。



道中、同じ班のデブに声を掛けられた。

なんだろうと思ったら、そのデブ

「今夜さー、寝る時、お前とか××(おれ以外の地味な3人のうちのひとり)とかハブられると思うよ~」と

無邪気に言いやがった。

ちなみにおれのクラス男子は2部屋に分かれて就寝するということで、2グループに分けられていたのだが、

おれの寝る部屋にはおれとその地味な3人のうちのひとり以外はヤンキーデブの仲間しかいなかった。

おれは「ああ、そう。ふーん、別に……」とか、さして問題じゃないようにふるまった。

心の中で、そんなの言われなくてもとっくにわかってるよ……と呟いたりして。


そんなこともあって、旅館に着いても憂鬱だなぁ……とぼんやりと駅のホームで電車を待っているときのことだった。

おれは同じ班のメンバーから少し離れたところに立っていた。

そのホームではいくつかの班がクラス関係なく合流し電車を待っていたのだが……

おれがぱっと見一人にいるように見えたのだろう、1組の男子Yがやってきておれに声をかけた。



その1組のYは、学年で人気投票をとったら確実にベスト3に入るほどの超人気者だった。ま、スポーツもできるし超イケメンから当然だけど。

おれとそのYは小学5、6年と中学1、2年で同じクラスが続いたので、何度か話したこともあり、

おれ自身、Yのことを「おれみたいな地味な奴とも話してくれる、いい奴。さすが人気者だなぁ」というふうに思っていた。


で、雨の中長時間歩いたこともあり、上のデブの発言もあり、おれはちょっと頭が痛くてぐったりしていて、

声をかけてきたYにも「いや、ちょっと頭痛くて……」みたいなことを話していたら、そいつがやってきたのだ。



そいつ……男子Kにしようか。


そのKとおれは、同じ小学校に通っていたというだけで、一度も同じクラスになったことはない。

そのKはYと同じ部活所属し、クラスボス存在だった。ちなみにKは5組、Yは1組ね。

KはYと親しいので、Yに「よお」とか挨拶してきた。

そこでようやくKはYの隣に立っている、暗い表情のおれに気づいた。

そしてKは言った。




「あ、おれこいつ嫌いなんだよね」



え?

耳を疑った。

頭の痛みのせいか、ぐらぁと体が揺れるのを感じた。おれは突然のKの発言に呆然とするしかなかった。

なんで?

おれなんかした?

Kと関わったことなんか一度も無いのに。

ていうか何その言い方。

まるで虫を見つけて「あ、おれこの虫嫌ーい」と言うような、軽い感じ。

いきなり向けられたKの敵意に、おれは吐きそうになった。

隣にいたYが「そういうこと言うなよ~」と笑って返していたが、それもショックだった。

ああ、その程度なのか……と。

怒ってくれとは言わないが、なんていうか、もうちょっと真面目に返してほしかった。


あとになって、このときのYのことを思い返して複雑な気持ちになった。

超人気者のY……もちろんおれもYのことを人気者として認めていたし、いい奴だと思っていた。

それでもあの場でのああい対応に、おれの理想のYとのギャップを見た気がしたからだ。

幻滅したといっていい。

勝手理想を抱いたおれが悪かったのかもしれないけれど。


で、おれはどうしたかというと、KとYから離れたい一心

「あ、おれ、班の人のとこ行かなければ」と言いながらその場を去った。


それから記憶ほとんどない。

その夜、ハブられておれと地味な3人のうちのひとり以外が

部屋で騒いでることなんかどうでもよくなった。



こうして書いてみても、いまだにあのときの嫌な気分は消えない。

Kに言われたときのことは今でも鮮明に思い出せるし、今朝みたいにふとしたときフラッシュバックする。

そらくKは言ったことを忘れているだろうけど。

こんな、いじめとも呼べない体験ですら10年以上経っても心に刺さるんだから

いじめられている人たちは卒業してからもっとツラいんだろうなと思った。

嫌なことは簡単には消えない。




どうすればKのことを払拭できるのか……まだわからない。

おれは今後もたまにKのことを思い出しては嫌な気分になるのか。

都合よく嫌な記憶を消してくれる人もいないし。

結局、自分でこれを抱えて行くしかないんだろうな。

あーあ。


たぶん誰にだって似たような経験はあると思う。

よくあること……でも、本人にとってはそうは思えないんだけどね。


K、見てるか?

お前のトゲは今もおれに刺さってるよ。






 

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん