2012-07-09

http://anond.hatelabo.jp/20120709163811

いちおう医師一心一心室が本質的にまずいっつーことはないです。

むしろ二心房二心室の複雑な配管のせいで人類は心奇形に悩まされてるわけで、一心一心室なら今ほど心奇形は多くなかったんじゃないかなーと思います

もっとも、現生人類の体をいきなり一心一心室にするといろいろ無理ありますけどね。血管抵抗とかがそういう風に最適化されてないから。心室→体循環→肺循環→心房とかすると静脈が滞って全身むくんじゃうだろうし、心室→肺循環→耐循環→心房はもっと最悪で肺血管が血圧に耐えられなくて狭窄しちゃいます

ま、もとから一心一心室ならそこらへんきっちり最適化されてて問題はなかったでしょう。なにしろジンベエザメの巨体だって循環させることが可能なんですから

別に生物は、“効率的な”二心房二心室を目指して進化してきたわけではありません。そのときそのときで、環境にあうように少しずつ変化してきたんです。進化の弱点なんですが、完全な最適よりも「今の姿の近く」で最適なところに落ち着いてしまやすいんですよ、局所最適といいまして。

もともと脊椎動物一心一心室・エラ呼吸。それが、干潟とかの環境適応して口腔とか食道の粘膜でガス交換できるようになったのが現在魚類祖先です。消化器だから、ガス交換するといっても体循環の一部。でもこれが発達して肺になっていきます魚類では浮き袋)。

ガス交換器なんだからエラと同じで体循環と並列でなく直列になればいいじゃんと思うわけですが、進化はあくまで偶然の積み重ねで、別に設計方針とか意図とかないのでそういうドラスティックな再配管とかできないまま陸上適応が進みます。まあ、再配管はできなくても少しずつ仕切りができて「肺方面」「肺以外方面」の区別ができてくるわけですけどね。はい一心房二心室

一心房二心室にもメリットはありまして。ワニとかカメとか、水中にいるとき別に肺に血液流す必要ないんですよ。そういうときに自由に肺血流オフにできる。これはこれで便利です。

で、水中生活と縁を切ったほ乳類は血流バランス自由度かいらなくなったので完全に仕切って二心房二心室にしたと。機能的には一心一心室と同じに戻ったんだけど今さら作り直せないから二心房二心室です。

消化管粘膜から肺が発達した件が尾を引いてるわけです。この件、他にも大問題がありますよね。食物の通り道と呼吸の通り道がのどのところで交差してる。飲み込むときは息止めないといけないししゃべれないのも、のどの機能が低下すると食物とか唾液が気道に落ち込んじゃうようになるのもこの進化歴史の気まぐれが原因です。

人体なんてぜんぜん最適化されてないんです。心臓も。

記事への反応 -
  • 魚は一心房一心室、両生類は二心房一心室、哺乳類は二心房二心室で、だんだん効率よくなるんですよ、って習うよね。 二心房一心室は、血が混ざってしまうから効率悪いのはわかる。 ...

    • いちおう医師。一心房一心室が本質的にまずいっつーことはないです。 むしろ二心房二心室の複雑な配管のせいで人類は心奇形に悩まされてるわけで、一心房一心室なら今ほど心奇形は...

      • 参考になった。 鳥類の呼吸器が空を飛ぶのに効率的なのも、そこらへんの偶然の産物なんかねー。

      • まじかすげえな! なんかよくわかったわー。 さすがお医者さん。 こういうお医者さんなら内臓さらけだしてもいいわ。 先生やってる子たちに教えまーす。

      • 単位質量あたりの酸素消費で哺乳類と魚類と比べたら,本質的にまずいと疑っています.酸素・エネルギー消費の桁が違うので哺乳類・鳥類においては,いわゆる教科書的な説明で正し...

    • エロくないし憶測で言うけど、 一対の心房と心室から静脈血(酸素に乏しい血液)がエラへ送られ、エラからそのまま全身を循環して心臓へ戻ってくる。 by.wikipedia(心臓:魚類) っ...

      • それがなんでなのかな、ていうね。 じゃあ哺乳類だって、肺を通り過ぎた血が、心臓に帰らずにそのまま全身に流れるシステムでもよかったわけでしょ? 動脈血と静脈血が心室で混じり...

        • >両生類や哺乳類が、1心房1心室ではダメだった理由ってのが、なんかあると思うのね。 だから、体温保つのにデカいエネルギー量を扱える代謝システムが必要で、それやるには1心房...

    • 哺乳類・鳥類の心臓が一心室系だったら,肺にかかる圧が高すぎて肺の血管が破れて死ぬ.そこの血圧を制御したとしても,肺で酸素化された血液が体循環でなく肺循環に戻ることと肺...

      • ごめん、 そこの血圧を制御したとしても,肺で酸素化された血液が体循環でなく肺循環に戻ることと肺で酸素化されない血液が肺循環でなく体循環に戻ってしまうことを考えるともっ...

        • 生理学を理解するには,一定程度の物理学・化学の知識が前提になるしあなたの知識程度がわからない.心肺と動静脈の構造と機能および血液中赤血球と赤血球中ヘモグロビンの酸素運...

          • それはわかるけど、それって両生類と哺乳類を比べた話だよね。 古い血液は全部心臓に戻り、全部エラにいくのが魚だから、増田さんの教えてくれた話とは関係ないんじゃないの? 哺...

            • 肺はえらより内在血管長が桁違いに長い器官で,肺に一心房一心室系心臓の出力血を流すと体循環圧が低すぎるし還流血を流すと肺の血管抵抗で血流が止まります.だから二心室必要で...

              • つまり ポンプ→毛細血管→ポンプ→毛細血管 ならおっけーだけど、 ポンプ→毛細血管→毛細血管→ポンプ を可能にするには、肺があまりに高度すぎて無理よ! ってことかしら。 ...

                • 定量的には,もし電気回路におけるオームの法則をご存知なら,肺に適切な血圧と血流を確保することを回路素子にかかる電圧と電流を確保するのと非常によいアナロジーがなりたちま...

    • 単位質量あたりの酸素消費で哺乳類と魚類と比べたら,本質的にまずいと疑っています.酸素・エネルギー消費の桁が違うので哺乳類・鳥類においては,いわゆる教科書的な説明で正し...

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