2011-08-30

野田佳彦という人

彼は高校の先輩にあたるが、面識はない。ただ、駅頭によく立っていたことは覚えている。

一度落選したことがあるせいか、ある程度、知名度をあげてからも駅頭挨拶をかれはよくしていた。2005年総選挙では首都圏民主党は壊滅的な打撃を受けたが、南関東小選挙区議席を守ったのは武蔵野市菅直人船橋市野田佳彦だけだった。結局、選挙に弱い政治家には指導者としての説得力が欠ける。彼が急速に民主党内で頭角を現したのはあの小泉郵政選挙を経て生き残ったからだろう。

私が普段利用している駅は船橋市習志野市の境にあり、政治家はよく駅頭に立っているが、国会議員野田ほど、頻繁に見かける人は他にいない。習志野市は例の堀江メール問題で自殺することになる故・永田寿康選挙区だったが、彼なんかはまったく見かけることはなかった。

船橋市にあっては野田は県船の卒業生で、一見、学縁があるように見えるけれども、もともと船橋人間ではないため、後援会活動もそれほど活発とは言えない。野田が持っている選挙の強さは地道に市民に語りかけてきた結果である東京から1時間からないという地の利があるにせよ、幹事長の時もよく駅頭にたっていた。内閣に入ってからはさすがにその頻度は少なくなったが、それでも稀に見かけた。

私は選挙権を得て以来ずっと野田佳彦投票してきたのだが、2005年総選挙の後、一度だけ街頭に立っていた野田に声をかけて、県船の後輩であること、ずっと投票してきたこと、今回も当選で来てよかったですねということを伝えた。彼は例のにこやかな顔で、ありがとうございます、本当にありがとうございます、と言った。そう言う時でも、普通政治家のようには両手を握って挨拶はしないのだなと思った。

ずっと野田投票してきた私だが、実は野田の政策はほとんど知らない。野田は政策は全く語らないかである

野田の駅頭挨拶の特徴はまったく演説をしないことにある。

「いってらっしゃいませ。野田佳彦です。よろしくお願いします」

支持者が言うのはそれだけであり、野田はそれすらも言わない。微笑みながら何度も何度もお辞儀をするだけである。ただ景色のように、そこにあるのがあたりまえのように、鎮座する大仏のように。

早大政経を出て、松下政経塾を出た彼に政策や見解がないわけではないと思う。ただ、主張は必ず敵を作る。選挙活動家としての野田は、「とにかく船橋市野田」というイメージ市民に与えることのみを留意して、政策はまったく語らなかった。船橋市民で野田に心酔する人はほとんどいないだろうが、彼を批判する人はまったくいない。熱狂はないが好感がある人を野田が目指したのならば、それは成功した。

政策的には野田財政再建派として知られている。しかし彼は政策提言である前にまず野田佳彦なのであって、市民はそれはそれとして、例えば息子がロックに凝っているとしてもロックは嫌いでも息子は息子であるように、野田野田という印象を持っている。これは政策党としての性格が強かった松下政経塾的な時代の民主党の中では特異なことであり、それが野田選挙力につながっている。

右だ左だ増税景気対策だと政策対立でまとまらない時に、野田のような人は案外、首相に向いているかも知れないと思う。

右だ左だ与党野党だと言う中で実利をひたすらとってきた野田はうすぼんやりとしながら、なんとなくひとつの方向性を出してゆくのではないだろうか。

  • ざっと読んだけど一度落選してるというのは好感が持てるかも。 菅にはうんざりしてる反動が大きいが、首相になったからには頑張って欲しい。

  • 「政策抜きで選ばれてる」って、威張るようなことか、アホか! って感想がまず湧いたけど いったん看板に掲げた政策やマニフェストがすぐグニャグニャになるアホ揃いの中では なん...

  • いつの頃からか、選挙が政治家を選ぶ手続きから単なる人気投票になってしまった。 もはやタレント議員とそれに対抗して街頭演説で名を売る信念を持たない名前だけの議員しか当選で...

  • 何も語らないほうが選挙に当選する日本の選挙 選挙のプロと言われた小沢氏が、辻立ちや川上戦略を重視したのがよく分かる。 日本の選挙は政策を語るよりもただニコニコしていたほ...

  • お金持ちに大量に触れて気づいた8の共通点 http://anond.hatelabo.jp/20110825105018 3317users 生活・人生 2011/08/25 --------------------- 自分でWEBサービスを作りたいと思っている人へ http://anond.hatelabo.jp/201...

  • 1年前に、野田佳彦という人を書いた船橋市民です。 千葉4区は、イコール、船橋市であり、人口は約61万人、有権者数はだいたい48万人です。ここしばらく、一票の価値が最も軽い選挙区...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん