気持ちが揺れる
「どうして」「行かないで」「ごめん」と
そんな嗚咽を漏らしながら電車は進んだ
積み重ねてきた年月は、ほんの数分前の、数秒の言葉で綺麗に消え去った
綺麗に終わらせなかったのは自分なのに、口から漏れる不平不満の呪詛の声
数年後
風の噂で存在を感じる
そこにいる彼女は懐かしくも、かつてとは違って
多くの出会いと別れをする彼女にとっては、自分などとうに忘れ去られてるのだろう
彼女が現在を踏み越えて行くたびに、自分の居た記憶は砂浜の足跡のように遠くの風景となってしまう
不特定多数の他人となり果てて、もう二度と繋がる事はないのだろう
それならばいっその事、消えてなくなりたくて
毎夜思い出して胸を打つ痛みに耐えるくらいならいっそ、記憶さえ手放したくて
彼女と自分が共に歩んだ記憶をこの世界からなくしてしまいたくて
捨て損ねた、置き損ねた気持ちをいつまでも引きずって
昼休み 花曇り ビルの輪郭も消える喫茶店のコーヒーも今日は飲む気がしない あいまいな空模様に目を奪われ思わず我が身をふりかえり怯えた もしも未来が闇の中で 眠っているなら...