10年くらい前の東大教養時代に原子力についての講義を受けた。
東大生は2年の終わりに進学振り分けなるものがあり、それまでの成績で進学先が振り分けられる。
人気の学科に行こうと思うなら、単位を揃えるだけでなく、その単位を高得点にする必要がある。
めざす学科もないが、漠然とした点数を上げなくてはというプレッシャーに追われる日々だった。
私が進路に関係ないであろう原子力についての講義を受けたのは、そのせいだ。
東海村に行き、何時間かの講義を受けるだけで簡単に高得点がとれると有名だったからだ。
少しでも点数を上げるのに必死だったのだ。
そんな適当な理由で受けたのだから、講義の内容はほとんど覚えていない。
東海村まで出向かなくてはいけないからか、受講人数は少なかった。
もちろん施設はきれいで塵一つない。
巨大で機械だらけのそこには、科学の粋を集めたようにも見え、ヒューマンエラーなど入り込む隙がないように見えた。
そんな機械の前で、案内してくれた人はそっと言った。
点数があるなら来るところじゃないよ。
よっぽどの使命感がある人以外には勧められない。
私の時代には、原子力工学はシステム量子といわれ、人気がなかった。
進学振り分けでは、最低点がつかない、いわゆる「底が抜けている」、どんなに点数が低くても必ず行ける学科として有名であった。
今でも底は抜けているのだろうか。
点数があるなら来るところじゃないよ。 よっぽどの使命感がある人以外には勧められない。 未来のない学問だよ。 おそらくそういう意味で「未来のある学問」なんてほぼ無いんじゃ...