2011-03-03

念仏系』ロックの台頭

RADWIMPS相対性理論神聖かまってちゃん世界の終わり、androp、amazarashiThe Mirrazといった、『語るように歌う』ロックバンド最近勢いを増している。

彼らの大きな特徴は、その歌唱法にある。

従来のヒップホップラップでは、声にドスを効かせたり、『Yo!』『Check It Out!』といったヒップホップではお馴染みのキーワードを口にしたり、語尾でキッチリと韻を踏んだりするが、彼らの歌唱法はそれとはかなり異なる。

ヒップホップラップほどに声を作らず、日常会話のように、朗読のように歌詞を口にする。そのままでは朗読になってしまうので、テンポを上げて、跳ねるようなリズムを取り入れている。そこに少しメロディラインを混ぜたような歌い方。これまでの音楽はない、独特のグルーブが感じられて、新鮮味がある。

歌詞の内容も、従来のヒップホップJ-POPロックバンドと比べると一風変わっている。

従来のヒップホップの大きなテーマは『自分を誇る』ことであり、歌詞の内容も、自分ラップスキルの凄さを自慢したり、気に入らないラッパーDisったりといった、アウトローの雰囲気を感じられる歌詞が多かった。

それとは別にJ-POPでは『恋愛』や『前向きに生きていくこと』が比較的多く歌われる。これはヒップホップが台頭して、ラップJ-POPに取り入れるようになってからも変わっていない。ケツメイシGREENFUNKY MONKEY BABYS遊助ヒルクライムなどが代表的だ。J-POPでのラップは、ヒップホップほど相手を威嚇しないようにはなったものの、依然としてヒップホップ的フックの雰囲気(『Yo!』といった掛け声)は残っている。

それらと比べると、『語るように歌う』系のロックバンドの歌は、あまりに歌う内容が違いすぎる。

彼らが歌う内容で多いのは『次元の捉え方』『記号・数式』『あの世死生観』『死にたい』『言葉遊び』『ポストモダン』などであり、そこには従来歌われていたテーマは微塵も感じられない。歌詞はひねくれているのにメロディキャッチーで親しみやすいから、そのギャップに困惑してしまう人も多いだろう。

それともう一つ重要なのはヒップホップ性を意図的に排除しているということだ。彼らはヒップホップ的なフックを全く使わない。DJもターンテーブルスクラッチ音も入れない。歌詞の内容も自分を全く自慢しない。むしろメンヘル的なイメージさえ感じられる。アウトロー性もほとんどなく、ヒップホップを象徴するアクセサリーファッションアートワークも用いない。その徹底的な姿勢は、まるでヒップホップから『語るような歌い方』を奪い取ろうとする姿勢さえ感じる。そういった意味では、ヒップホップへのアンチテーゼとも言えなくない。ヒップホッパーも、この現象には困惑しているだろう。

これらの歌い方をするバンドを『念仏系』と呼ぶ人がいたが、案外的を得いるかもしれない。

この歌唱法を広めたのはRADWIMPSだが、結局のところこの歌唱法は時代が要請したものだったのだろう。価値観の反転、雇用制度崩壊、複雑化した世界――そういった時代を表現するためには、従来の歌唱法だけでは足りなかったのだ。今後この歌唱法がどのようになっていくかは分からないが、僕としては静かに見守っていく次第である

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