2010-07-27

嘘みたいな本当の話 出生編

父親が苦手だ。

彼の娘として生まれて30年近いけれど、まともに話した記憶も無い。

学校行事に来てくれたことも無いし、旅行に一緒に行った事も記憶の限り無い。

そう言えば名前を呼ばれた事もほとんど無い。

目も合わせてくれない。

ただ時折二人きりになると、私の人生がいかに間違っているかを一方的に短く言い放って、あとは新聞に目を落とす。

笑った顔も見ない。私が作る料理にはいつも何の言葉も無い。

彼が一体何を考えているのか、私の事をどう思っているのか、さっぱり分からなかったけれど、今日ようやくスッキリした。

母が耐えきれず私に零したのだ。

ごめんなさいね、本当にごめんなさい。

そんな謝罪から突然始まった告白は、ちょっと私には重すぎた。

母は元々父と結婚する気などさらさら無かったらしい。

なにせ父と出会った時、母は別の人と結婚していたし、なにより父自身が別の女性結婚していた。

なのに、父は母に迫った。

そうして無理やり関係に及び、その一回で運悪く私が宿ってしまった。

母を手に入れる為に、父は私を植えつけたのだ。

母はなんと言うか、間違った方向に情にもろい人間で、前妻がどれほど恐ろしいか泣きながら語る父を見ていたらどうしても放っておけなくなってしまったのだと言う。

無理やり既成事実作った男に同情するなんて、ありえない。

ありえないはずなのに、こうして私はここに今生きていて、父は相変わらず私に興味がない素振りをしている。

自分の親に言う台詞では無いが、馬鹿だ。

はっきり言って末期の馬鹿だ。

そんな昼ドラみたいな安っぽい人生劇場、今更言われたってどうしたらいいの。

謝るくらいなら、墓まで持って行って欲しかった。

私はそんな事、これっぽっちも知りたくなかった。

茫然自失状態の私を見て、母は慌ててこう付け加えた。

「でもね、おとうさん、最初こそアレだったけど、今は昔よりはあなたのこと、可愛いと思っているのよ」

ねぇお母さん、知ってる?

その言葉、最強のとどめだってこと。

死にたいなんてことは思わないけれど、父に対して今まで必死だった私が可哀想すぎる。

最初から無い「愛情」が、ただ「見えない」だけだと思い続けていた私が一番の馬鹿だったんだね。

  • どうか素敵な旦那と幸せになってください バージンロードは恩師と一緒にでも歩いたらいいよね

  • そうして無理やり関係に及び、その一回で運悪く私が宿ってしまった。 前後や背景は違うけど、オレもそういう事情だって、言われた。借金のカタみたいな話で、ヤッた、デキた、結...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん