2009-10-17

いまのところ男でも女でもないんだけど、これからどうしよう

実際上の問題として、私は男でも女でもない。

男として振る舞っている時間と、女として振る舞っている時間、両方ともにあるということだ。7:3か8:2で男の方が多いだろうか。

最近ニュースにもなったいわゆる半陰陽ではない。生物学的には、完全に女性である。

「周りは合わせてくれてるだけだろ」とか「文章が完全に女」とか、そういう話はとりあえずおいておかせてほしい。

前者については、一部はそうかもしれないが別の一部はそうではないと断言できる、としかネット上では言えないし、

後者についてはよく自覚している。読むに耐えないほどの分かりにくさでないことを祈っている。

自分が異常であるという自覚は長いことなかった。「性同一性障害」という言葉自体は昔から知っていたが、それが自分に関係のあることかもしれないと初めて思ったのは15歳になる頃だ。病院に行ったのは高2。一年ほど通って、染色体検査を受ける段階までの治療を受けた。だが、それから間もなく、ぱたっと通院をやめてしまった。理由は単純で、

「ここから先は、将来のホルモン注射や手術に向けての治療になります。

 あなたはどうしたいですか? 性別再判定手術(性転換)を受けたいですか? 男の体になりたいですか?」(意訳)

と言われたからだ。当時私はその質問に答えられなかった。今なら答えられる。

「肉体を変えたいとは思っていません。それはどちらでもいい。

 ただ、女として生きていくことを望んでもいません」

さて、親元を離れて大学に通うようになり、私はそこで男として暮らすようになった。特に深い動機があったわけではない。ただ単に、社会に出る前に一度くらい、「まとも」に生活したい、と思っただけだ。

そのまま、今年で四年目を迎える。

大学生活は楽しい。色んな勉強をして、色んな人と遊んだ。だいぶ賢くなったと思うし、今はもう昔ほど自分のことで暗い気持ちになったりはしない。今の生活においては、私は「普通」でいられるのだ。しばらく前には彼女もでき、将来を視野に入れたお付き合いを続けている。「病人」であると人に話したこともあるが、差別侮辱も受けたことはない。「男性」としての生活は、全く円満で快適で、率直に言えばいま私は幸福だ。

ただ、将来のことを考えると、果たしてどうしたものか、困ってしまう。

修士進学はごく普通の進路としてあったので、今のところはいい。だが、将来はやはり広い世間に出て働かなければならない。働き口があればの話ではあるが。

そのとき私は、男になれるのだろうか、女になるべきなのだろうか?

多分どちらにもなれると思う。

そして多分、女になった方がいいんだろうとも思う。

どちらでありたいかと言えば、このまま男でいたい。ただそれは今が幸福だからで、将来世間様から「病人」「異常者」として扱われるようになったとき、こんなはずじゃなかったとか言って後悔するんじゃないかとも思う。また、性転換手術を受ける気もあんまりないのが問題だ。別に女性器はついていてもあまり関心がないし、治療を受けると副作用腎臓やらあちこちを悪くすると聞くから、それがちょっと嫌だ。健康に長生きしたい。そう思っている自分には、男として(つまりは性同一性障害者として)生きていくに足る覚悟がないのではないか、と思う。

だが一方で、やり直しの効きづらい人生女性として生きれば、それを後悔することにもなるんじゃないかとも思う。そう思う理由は色々あるが、一番端的に言えるものとしては、かつて女であった頃には幸福ではなかったからだ。女として振る舞うこと自体は、多分問題なくできるだろう。その程度の演技力は、誰でも持ち合わせているものだ。

この辺りの「どっちでもいいよ」感というのが、非常に微妙なところで、批難されるに値するところだろう。

単純に言えば、私は「重症」ではない。性同一性障害というものにも、重かったり軽かったり色々あるそうで、軽い人達は案外そこら中で声をひそめて生活しているんだと思う。私もそういう風にしていくべきなんだろうか。それは不可能ではない。異常でもなければ社会的苦難を背負うわけでもない。ただ幸福ではないだろう、と今のところ思う、というだけだ。

あと一年ほどで、最低限腹を括らなければならない。

いまのところ男でも女でもなく、肉体を男に変えるだけの覚悟もなく、かといって女として生きていくのも嫌だとぼやいている、それが私の現状である。

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