2009-10-01

東京ゲームショウで会ったコンパニオン

初めて彼女と会ったのは関係者用の休憩室だった。コーヒーを飲みながら誰かが置いていったファミ通を読んで時間をつぶしていたら、目の前にどっかと彼女がすわった。たばこに火をつけて、ふーっと煙を吐くとおもむろにこちらを向き、

「アイツらまじキモいでしょ?キモすぎでしょ?」

と話しかけられた。そこで初めて、彼女が同じブースで大量のアマチュアカメラマンに囲まれていた女性だと気づいた。笑顔モデル立ちではなく、眉間にしわを寄せて足を高く組んで座り、たばこを呑む姿は、別人にしか見えなかった。

「えーと、アイツらってカメラの人たちですか?」

「全部、全員。必死にゲームやったりとか、まじキモい。あと臭い。」

「なるほどー(どうしよう……)」

ここでふと僕の手にあるファミ通に目をとめた。

「それもキモいの?」

僕にはなかった発想だが、確かに彼女からみれば、気持ち悪いのかもしれない。

「いや、そんなでもないです。」

ふうん、と興味を失ったように携帯をいじり出す。

お仕事大変ですねー。」

キモいだけ。別に。」

「なるほどー(どうしよう……)」

「困ったときはとりあえず自分に正直に」が僕の人生攻略法なので、

「や、でも自分の作ったゲームをすごく楽しみにしてくれるって嬉しいですよ。お姉さんも、綺麗だなーって写真撮ってもらうのって嬉しくないですか?」

「別に。辞めるし。キモいから。」

「え、辞めちゃうんですか?」

いじめとかちょうウザいし、23のババアのくせに。寄ってくるのもキモいし。すぐ別に行っちゃうし。あ、あたし行くから。」

一方的に言葉を紡ぐと、ドアに向かって歩きはじめた。ノブに手をかける瞬間、彼女は目を伏せて、ふっと息を吐き、ちょっとびっくりしたように見開いた。眉間のしわがなくなり、それだけで別人のようだった。口元にほほえみをのせた。まるで死人が生き返ったみたいだった。

残された僕は、あまりにも世界が違う人間を前に、しばらく痺れていた。せっかく集まってくれた自分のファンをキモい呼ばわりも許せなかったし、23ってお前とたいして変わらんのに何いってんだとか、本当に理解ができなかった。同時に、まったく関係ない人間にもかかわらず、彼女の今後を想像すると暗くなった。今を否定して、ファンを否定して、辞めるって、なんだよ。そんなんじゃ、何にも変わんないだろ。

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