2009-07-13

くだらないはなし

日雇いバイトで知り合った女の子で、話していて「すごくいいな」と思う子がいた。家の方面も近く、電車で一緒に帰ってきた。話はとても楽しかった。アドレスを交換して帰宅し、家に帰って考えた。今日これで連絡をしなければ、このまま「相手の顔が思い出せないアドレス」になってしまう。そう思ってから、連絡をする決心をするまで、自分でも驚くほど速かった。決心を固めるまでは、だけども。

「今度会ってまた話しませんか」これだけの内容を伝えるためにどれだけ頭を悩ませただろう。あまり押しつけがましくならないように、文章を書くことの難しさを噛みしめつつ、気づけば1時間半が経過していた。夜の10時ごろになってようやく完成した。送信ボタンを押す時はもちろん目を瞑り、息をとめた。「送信しました」の文字を見ないうちに携帯をたたみ、テーブルに置いた。

返信が来たのは日付が変わってすぐだった。その日はあきらめて寝ようと電気を消したところで、返信を見たくなかった。しかし思いとは裏腹に、勝手に手が携帯を開いていた。目にした文章は「時間が取れないの。だからごめんね」という感じのものだった。だめもととは思っていたが、文に向ってみるとショックではあった。その文章は何度読み返してもNoの返事ではあったけどまったく棘がないものだった。哀れな僕を傷つけないよう、メールを受けてからいままで考えていたのかもしれない。そうだったら悪いな、と思いつつ、簡単にその日のお礼を言ってメールおしまいにした。

そのあと僕は不思議な感情に気づいた。相手の憐みの混じった心遣いとか、自分のその時のカッコ悪さとか惨めさとか、そういったものはそれでもなぜか、心地よいもののように感じられたのだ。いやむしろ、そういう負の感情が全部まじりあって、奇妙な達成感のようなものを感じていた。自分ささやかなしたたかさに対して僕は、やはりささやかな誇りを感じていたのだ。

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