2009-07-01

東京都排出権取引規制」は、大変なことになると思われる

日経新聞の6月30日都内版にしか載っていないニュース

http://www.nikkei.co.jp/news/retto/20090629c3b2904q29.html

>大規模事業所のCO2削減 都、排出量取引に制限

東京都は29日、2010年度に始まる温暖化ガス排出量取引制度

>詳細を公表した。都内の二酸化炭素(CO2)排出の削減を優先するため、

>都外企業からの排出枠買い取りは削減義務量の3分の1までに制限する。

>一方、売却する企業にも上限を設ける。

>都は来年度、大規模事業所にCO2排出の削減を義務付ける。

対象は、原油換算で年間1500キロリットル以上の燃料を使用する約1400の事業所。

>02~07年度の間の連続する任意の3カ年の排出量の平均を「基準排出量」として、

>14年度までにオフィスビルで年平均で8%、工場で6%の削減を求める。

省エネルギーなどで対応できない場合、他の事業所から排出枠を

>購入して削減量に充てることができる。

>売却できる量は、削減義務量を超過達成した分から算出するため、実際の取引開始は11年度になる。

>排出枠の購入は都外の企業からも認めるが、購入できる量に差を設ける。

>都内の事業所からの場合は、削減が義務付けられた排出量のすべてを購入できるが、

>都外の事業所からの場合は、削減義務量の3分の1までとする。

門外漢の方には非常にわかりにくいだろうし、恐らく記者連中も判ってない、

だから日経を除いてニュースにも取り上げられていないし、

ブログでも取り上げられていない。

しかし、このニュースは、実はとんでもないニュースであり、

下手すれば企業の都外流出を促す可能性すらある。

例えば、年間1万トンのCo2を排出するオフィスビルの場合、

排出量を9,200トン以内に抑える必要がある。

(800トンを削減する必要あり)

しかし最新ビルの場合、それなりに設備も新鋭化しているので、

削減余力は極めて限られている。

ビル内でできることといえば、照明をLEDに取り替えること程度である。

実際は、せいぜい1~2%しか削減できない。

太陽パネルを屋上に設置すればいいじゃん」と無邪気に考える

トーシローの方もいらっしゃるだろうから、某ビル計算してみた。

その場合、敷地面積の1.6倍の太陽パネルを敷き詰めなければ

ノルマ(8%削減)は不可能、となった。

つまり、敷地内だけではどうあがいたってノルマ達成は不能である。

ノルマ達成のためには、急遽別の遊休地(ビル敷地の1.6倍以上の面積)を買ってきて、

そこに太陽パネルを敷き詰めるしかない。

遊休地といえども、急に買えるシロモノではない。

もっとも、このニュースが配信される前、6月29日までは、

「都外事業所から排出権を購入してノルマクリアすればいい」

と多くの不動産会社は考えていたはずだ。

あるいは大規模商業施設病院大学も同様の考えだったはずだ。

メーカーとかで、本社は都内だが地方工場を有する会社であれば、

地方工場の排出権削減枠を、都内本社に付け替えればいい」と

皮算用していたであろう。

その甘い考えを打ち砕いたのが6月30日の日経記事である。

先述のビルの場合、266トンまでは都外事業所からの排出権購入でいいが、

534トンは都内事業所から排出権購入するか、自ら削減しなければならない。

都内事業所で排出権余力が出るような業態はまず考えられないから、

都内事業所からの排出権購入は、事実上不可能である。

つまり、534トンを自力で削減しなければならない。

唯一考えられる方策は、電力を東電の一般電力で調達していたのを、

グリーン電力」に変更することである。

こうすれば、計算上、Co2排出係数が変更になるので、東京都ノルマクリアすることができる。

かしこれは同時に、ものすごい「グリーン電力バブル」が発生する危険性を孕んでいる。

恐らく今年から来年にかけて、都内事業者によるすさまじい

グリーン電力争奪戦」が繰り広げられるだろう。

そもそも、そうカンタン発電所は増設できない。

なので、2010年には一時的にグリーン電力ショートする可能性がある。

となると、「ノルマ未達企業」が続出することになる。

京都議定書は「罰則なき紳士協定」だが、東京都の場合は罰則がある。

その内容は「未達分は東京都が排出権を調達する、

その調達額の1.3倍を罰金として企業は支払う」である。

しかし、恐らくグリーン電力バブルが発生しているだろうから、

排出権価格も跳ね上がっており、東京都の調達額は相当な額になるだろう。

というか、東京都は都外から排出権を調達するのか?それとも都内から調達するのか?

都内からの場合、排出枠が「払底」していて、都といえども調達自体が不可能になる。

※もっとも、未確認情報では、都は太陽光発電設置個人へ補助金を出す見返りに

 個人から排出権を手当てして、それを未達企業の排出権枠へ流用する、との話もある。

ノルマが達成できそうにない企業はどのような行動を取るか?

例えば都内に本社千葉工場神奈川埼玉に営業所があるようなメーカーであれば、

「都内勤務者の1割を千葉に配転、1割を神奈川埼玉に配転」して、

人員そのものを削減してノルマを達成しようとする可能性がある。

つまり、事実上の都内オフィス規制に作用するのである。

東京都は、8%削減ノルマが達成不能である、という認識を持っていない。

だから、まさか自らが打ち出した規制が、オフィス規制効果があるとは思いもよらないようだが、

実際は都外転出を招く危険性が高い、と思われる。

話としては、地デジ騒動並みのトンデモな話なのであるが、

都内の事業者が大人しいのか、マスコミが鈍感なのか、全然ニュースになっていない。

2010年になってグリーン電力価格が急騰してから、鈍感なマスコミが慌てて取材する姿が眼に浮かぶ。

※因みに、東京都環境局のホームページ

 http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/ondanka/index.html

 をいくら探しても、

 日経ニュースを裏付ける情報が掲載されていない。

 日経記者特ダネなのか、あるいはガセか?

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