2009-03-07

じゃあ結婚すれば?30年後

私たち人生が変えられた日から、もうすぐ30年もの月日が経とうとしている。

私とバカ男子入籍して5年ほど、それぞれ別々の生活を送り、独り身のような身軽さを楽しんだ。

その後どういう経緯か忘れたが私は職場を辞め、向こうでバカと二人の生活を開始した。

同居して2年、私たちの間には娘が生まれる。

バカの子にしてはとても聡明で、私の子にしては素直でかわいい大事な一人娘。

(もちろん娘の前でヤツを「バカ」なんて呼ばないよう注意していた)

の子が成人した日、私はバカとの結婚強制婚によるものだったと告白した。

意外にも彼女の反応は薄く、「ふーんそうだったんだ」程度。実物の婚姻届を見せてみると、「目にやさしくない色だね」と言った。

強制結婚制度」が廃止になってからもう十数年になる。当時あったような世間見方はだいぶ薄れていたのだろう。

ひょっとしたら娘は前から知っていて、私を気遣い気にしない風に装ってくれたのかもしれないが。

どこかの誰かによる気まぐれか明確な意図によって、私は赤い婚姻届対峙するはめになった。

「同じクラスバカ男子」は「バカ夫」に変わり、やがて「バカ父」になって私たちの前から去った。

実は数回「元バカ夫」になりそうな事態もあったが、娘はほんとうに聡明だったし、私は寛容さを身に着けた。

なによりバカ結婚することがなければ知ることのなかったものが沢山ある。


ほんのり汗を滲ませながら、ゆるい坂道をのぼっていく。娘には少しきつそう。

無理しないで下で待っててと言ったのに「大丈夫大丈夫。父さん拗ねるだろうし(笑)」とついて来たのだ。

あーあ、もう少しで「バカジジイ」に昇格するかもしれなかったのに。

しかったよねぇなんてアホなことを話しながら、ヤツがぐーすか寝ている場所に冷たい水をかけてあげる。

謎が残ったままなんて落ち着かないよ、と直線的にカットされた石に向かってつい零してしまう。

平均寿命までもうしばらくあるけれど、私はもう現世で結婚することはないだろう。

今になって思えば、全ての始まりであるあの婚姻届赤色だった理由が、ちょっとだけわかる気がする。

せめてあと10年、一緒にいたかったなあ。私たち結婚象徴する色の記念年まで。

そこまではさすがにあの紙も強制できなかったけれど。

http://anond.hatelabo.jp/20090222192849

記事への反応 -
  • 小学生の時、クラスにいたバカな男子の口癖が「じゃあ結婚すれば?」だった。 とにかくどんな時でも、ふざけて会話の脈絡なくそう返してきた。 そんなことを十数年ぶりに思い出し、...

    • 同じ話を聞いていた自分も、まさかそんなことがあるはずは、と思っていた。 最近はマスコミも信じられないし、まあ都市伝説の類かなと。昨日までは。 心当たりなどほとんどない。...

    • あれから1日。目覚めは良くも悪くもない。 いつも一番早く出勤する同僚によれば、彼女が来たときには既に私の机に置いてあったという。 彼女は当然のように「強制結婚制度」のこ...

    • あれから1週間が経過した。いまだに「夫」から私への連絡は無いままだ。 私はだんだん痺れを切らしてきた。宙ぶらりんな状態のまま待ち続けるのは性に合わない。 さっさとバカ夫(...

    • 気づいてみればもう1年だ。 残念ながらこれといって大きな変化はなく、目まぐるしく過ぎた1年とも言い難い。 現在も、私と件のバカ男子は同居していない。式は行わず、互いの両親...

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