【あらすじ】
「神世紀伝マーズ」とは横山光輝先生の「マーズ」をアニメ化したものだが、シリーズ構成は「ゴッドマーズ」の藤川桂介だったので結局「ゴッドマーズ」になりました。下記は月刊声優グランプリ2003年4月号「神世紀伝マーズ」座談会の書き写し。
神世紀伝マーズ 座談会
出演者
水島裕(「六神合体ゴッドマーズ」の「マーズ」役)
関智一(「神世紀伝マーズ」のマーズ役)
藤川桂介(「六神合体ゴッドマーズ」脚本、「神世紀伝マーズ」シリーズ構成)
水島 関さん、この「神世紀伝マーズ(以下マーズ)」はオーディションだったの?
関 いえ、今回は特にオーディションはなくて、呼ばれるがままにやらせていただいた
という感じで。水島さんは当時は?
水島 僕はオーディションです。実を言うと「ガンダム」のオーディションに落ちた直後に
「六神合体ゴッドマーズ(以下ゴッドマーズ)」のオーディションがあって、三ツ矢雄二さん
たちと受けたんですよ。オーディションでがんばって選んでいただいたという感覚
なんだけど、関さんいいね。
関 決めてくれた方に大感謝です。
水島 今回、「マーズ」が本来の原作バージョンで始まると聞いて、軽いジェラシー
もあって(笑)、拝見したんですけど、全くちがいますね、先生。
藤川 ちがいますね。「マーズ」は本来の横山光輝先生のデザインに近い形に
近づけているんです。「ゴッドマーズ」のほうはいろんな事情があって、原作から
「時代にあわせていくら変えてくださっても結構です」と直接言われてね。
それで「ゴッドマーズ」は思いっきり変えていったんですよ。
水島 この原作からよくあれだけの話を作り出したなって。でもいろいろ制約が
あったが故にあれだけ話が膨らんだんですね。
藤川 制約があればあるほどその中でいろいろ工夫するのが楽しいんだよ。
関 僕も小学校4年生ぐらいで「ゴッドマーズ」観てました。原作を読んでみて
全然違うってすごく驚いたんですよ。合体しないんですよね、「マーズ」は。
水島 六神が六神で、合体しないんだよね。むしろ敵なんだよね。
藤川 「ゴッドマーズ」は合体することを前提とした話なんだよね
だから六神のデザインが全然ちがうでしょう。
おもちゃにしやすい形になっているんだよね。
関 それが大成功で、僕たちの中でも大人気でした。
藤川 男性人気はどうだったんだろうな?女性ファンのほうが多かったような気がする
藤川 キャラクターデザインの本橋秀之くんが美形を描くからね。そのへんでの
人気があったんじゃないかな。
水島 あとは、三ツ矢さんがやったマーグとの兄弟愛というのが、非常にクローズアップ
されていましたよね。それまで、兄弟の愛情というのはなかったですよね。
藤川 「ゴッドマーズ」の頃って、家庭崩壊が始まった時期なんですよね。たまたまそれを
テーマにして書いてみようと思ったんだよ。ただアクションやってるだけじゃつまらないから
その時代の空気を取り込もうと思ってやったんです。今も近いような現状があるよね。
「マーズ」ってそういう時期に復活してくるのかな。ちょっと不思議な気がするけどね。
水島 当時は9割が女性ファンだったと思うんですよ。でも先生、あれは多分
マーズよりマーグの人気でしたよね。僕たち、マーグのお葬式をやりましたものね。
確か「あしたのジョー」の力石以来のお葬式だったらしいですよ。僕や他の
クラッシャー隊のメンバー、石丸博也さん、塩谷翼さんたちも、参加したんですよ、
クラッシャー隊の制服着て(笑)。正直言うと、みんな半分以上「これは冗談だろう」
というヘラヘラした気持ちがあったんですよ。それが3,400人のファンの人たちが
みんな喪服着て泣いているっていう状況をまのあたりにして、表情がさっと変わりましたね。
まじめにお焼香して帰ってきました。あれは絶対忘れられないですよね。
藤川 でもね、僕はいつも思うんだけど、ああいう魅力的なライバルキャラがいても
中心になる主役がしっかりひっぱっていかないと、うまくいかないんでよ。
例えば「宇宙戦艦ヤマト」だと、古代進はたいしたことない奴だけれど
確かに女の子はマーグにのったけれど、マーズがいたから、こいつが冴えるんですよ。
それを忘れちゃいけないと思う。
水島 三ツ矢くんもうれしかったんじゃないかな。ある意味幸せですよね。
それだけパワーを与えられた作品に出られたということは。僕たち出演者の中にも
強く残っていますね。
藤川 数年前に、中野サンプラザで主婦が大結集して、大きなイベントをやったんですよ。
子供も連れて親子でね。すごい熱気でしたよ。「ゴッドマーズ」は不思議に女性ファンが
ひっぱって次の世代、次の世代に人気をつなげているんだよね。
水島 でも去年、先生と一緒に池袋で「ゴッドマーズ20周年記念イベント」を
やったじゃないですか。あの時は男性ファンが多くてビックリしたんですよ。
3~4割男性が来ていましたから。
藤川 あんなに男性が来るとは思っていませんでしたね。最近は男性女性の差が
なくなってきた、感じ方が同じようになってきたんじゃないのかな。今そんな気がする。
水島 今度の「マーズ」の評判ってどう?
「懐かしいね、昔読んだことあるけど、同じようなのやってるね」っていう反応が
多いですよね。あとは「ゴッドマーズ」を知っていて、観てみたらずいぶんちがうので
ビックリしたというような反応が多いですね。今回は女性が熱狂するような
美形の人が出てこないんですよね。マーズも昔ほどすごい美形というわけでもなく
水島 「マーズ」の原作って、30年以上前の作品なんですよね。でもそういう古さみたいのは
全然感じないですね。
藤川 少しずつ時代の呼吸みたいなのを入れていってるからじゃないかな。そういう意味では
今回の「マーズ」も少し変えてあるんですよ。
関 今回はどのへんを特に意識されて?
藤川 マーズの理解者が多いんですよ。博士もそうだし、新聞記者もそう。
「ゴッドマーズ」にはそういう意味の理解者はいなかった。今回は、
理解者に囲まれた中で、絆が通い合った人たちがマーズを支える。
そういう中で、マーズは地球全体のために働こうという気持ちになってくる、
というお話が展開しているんです。
関 そうですね、原作のマーズは、人間との間に生まれた誤解によって、
最後は地球を爆発させちゃうんですけれど、今回の藤川先生の本では、
支えてくれた人たちの気持ちにほだされて「僕が地球から去ります」
という形になったんですよね。
藤川 彼自身もそういう人の思いに支えられながら、火星を再生するという
次の目標に向かって行くんだ。前に進むたねのエネルギーになってくれる人って
必要だよね。そのためには、目標をなにか持って、一生懸命がんばってほしい。
そうしたらきっと支えてくれる人が出てくるよ、というところを
わかってほしいんだよね。
関 原作にない、ミューズという女の子キャラも登場してますよね。
藤川 いないんです。当時の男性漫画家の作品って、男のドラマという感じで
女性が出てこないんだよね。もったいないでしょ。女性も少しは入らないとね
関 ちょっと色気もね(笑)
藤川 ああ、こんな女の子を好きになったら良いなとか、こんな女の子と
友達になりたいとか、観てくれた人たちが思ってくれたらいいなと。
で普通の出し方をしていたら当たり前ですから、ちょっと不思議な感じで
出してみたと。
関 プラトニックな感じですよね、直接の会話もなくて。
晴美さんというお医者さんの娘さんもいて、ずっと心配してくれたり
したんですけど、結局彼女とも最終的には別れることになって
藤川 ミューズはマーズに思いを託して、エネルギーになって支えているわけだよね
あれだけ尽くしてくれる女性がついているのは幸せだよな。そんな
女性に出会えたらいいよね。僕たちの世代って。だいたい男が中心になって
動いていた時代でしょう。だから一生懸命支えてくれる女性が必要だったんです。
それは今も同じでしょう。女性が前にいるときは男性が支えてあげる、
両方がつっぱしったら絶対うまくいかないと思う。カバーし合える人を見つけられるといいよね。
水島 「ゴッドマーズ」のときにキーワードで確か1999年、とかありましたね。
藤川 あの頃惑星直列が起こるっていうんで、非常に不安が高まってましたね、
世紀末にひっかかってきて。
水島 SF的なものって今は難しいですよね。この先どうなるんだろうという期待が
昔はあったんですが…。
昔の進化の速度と違うからね、つまんないSFだとあほらしくて。
水島 鉄腕アトムも今年の生まれですよね。今、そういうSFものを作ってらっしゃる方って、
「読み」が難しいでしょうね。
藤川 最近考えてみたんだけど、鉄腕アトムが今の時代の科学の進化に合わせて、
進化したらおもしろいかというと、そうじゃないと思うんだ。原点にある、
あのアトムだから、観ていてほのぼのとするものがあるんじゃないかと。
逆に現代に合わせすぎちゃうと、つまらなくなるんじゃないかなと思うんだ。
「マーズ」もね、作られたその時代の雰囲気をもって出てきても、僕は
楽しめると思う。
関 ディテールはいろいろ科学的なもので味付けされているけど、普遍の
根本的な心情、そういうもので主人公たちが動いているというところが
「ゴッドマーズ」にも「マーズ」にも通ずる魅力なんじゃないかなと思います。
藤川 なるべく僕はそういうふうにするようにしたんですよね
そうしないと、「ゴッドマーズ」から観ている人も、今回新しく「マーズ」を
観る人も、混乱しちゃうと思うんだ。昔、心の中にバッと入ってきた「ゴッドマーズ」と
今の「マーズ」が、精神的な根底にあるものまであまりにもちがってしまったら
混乱してしまうよね。形はちがっているけど、支えている気持ちは一緒、という
ところがないと、きっと失望しちゃうんじゃないかな。
そういう点では、ふたりはそれぞれちがうマーズを演じ分けたけれども、
根底にあるものは同じようなものだと思うんです。きっと「マーズ」の両作品
のファンの思いはこのままずーっと続くと思うんだね。何十年かたったら
またおふたり、マーズをやることがあるかもしれないよ。
藤川 今ね、一つ興味もっているのは、ブラックホールのことなんだ。
その中で今いちばん注目されるのはブラックホールなんだ。
今度「マーズ」をやるとしたら、僕はブラックホールに関係したものを
書くと思うな。
水島 お、それは予告ですね。どうする?そのときは、このメンバーに
もうひとりマーズが加わるんだよ。関さんに「小学4年のころ観てました」
ってね(笑)。
関 複雑ですね。
藤川 物書きとして言うとね、横山先生の作品って不思議な魅力があるの。
どう細工してもおもしろくなる要素をもっていて、解剖の仕方によって
いろいろな書き方ができる。そういう魅力をもった作品に出会えたのも幸せだし
今回こんな形で両作品のヒーローに同じ時に出逢えるというのは幸せだったなと
思います。さらに次の世代を継ぐマーズが現れてくれると、もっと楽しいかな。
期待したいですね。水島さんも関さんもさらにがんばって、これからもいい仕事を
続けていってほしいなと思います。
僕は関さんとは今回初めてだったんだけど、すごく入りやすく話ができた。
「ゴッドマーズ」を小学4年の頃観ていたという人と、今回同じ作品の
同じ立場で話ができたというのはラッキーだと思います。
関 僕もテイストはちがえど同じ作品に出させてまらったということで、いい緊張感
の中でお話しさせていただけたので、とても楽しかったです。昔の自分と
水島 そうだね。僕も「鉄腕アトム」のリメイク版にゲストでださせてもらったとき、
すごくうれしかったな。やっぱり自分が観てて好きだった作品に参加できるって
すごいことだよね。
関 やっぱり普通に生きてても、そうそう起こりうることじゃないじゃいですか。
僕がこの年齢くらいで、しかも、今、リメイクされないとありえないことだから。
本当に幸運なことですよ。今回「ゴッドマーズ」のビデオも拝見させていただいたんですけど
やっぱりカッコいいんですよね。今回の「マーズ」は話のテイストは違いますけど
以前の「マーズ」も今観ても絶対おもしろいと思うので、両方観て、横山先生と
藤川先生の発想の膨らませ方のすごさに驚くとともに、僕がファンとしてまた
役者としてそれぞれ体験したかんどうもを、みなさんに感じていただければうれしいなと
思います。
水島 本当ににそうですね。「ゴッドマーズ」のほうは、20年前にスキだった人が
今観ると、あの時にタイムスリップできると思うんですね。あの時の匂いとかを感じられる。
同時に、年代によって感じるものや得るものがちがったりすることもあるので
両方の楽しみ方ができると思います。「マーズ」のほうは原作に近いテイストなんですけど
こりゃ3作目を作らないといけないね(笑)
関 さきほど先生からもお話も出ましたけれども、次回作、ブラックホールを
題材に、なんてありましたけどぜひ!
藤川 やれたらいいですね。
水島 その強い思いが素敵!
藤川 やっぱり思ってるとかないますよ。思うというのは目標を持つことだから。
ぜひ持ちたいね、この目標!
水島 そのときはまた、僕と関さんと、また10年以上世代の離れたマーズ役がいて(笑)
「マーズ大河ドラマ」みたいに・・・いいですね。
藤川 ぜひそうなりたいね。
関 20年おきに1回ずつ。
関 じゃあ、5年ずつぐらいに。
水島 助かるね~。