仕事の帰り道、電信柱の脇のダンボール箱に非モテが捨てられてた。
ダンボール箱、でかっ。
箱に何か書いてある。
「どうか、この子をモテにしてあげて下さい。色んな意味で余裕のある方、お願いします。」
無理。即答。
空には暗雲が立ち込め、ポツリ、ポツリと雨がぱらついてきた。
その場を立ち去ろうと10mくらい足早に歩いたんだけど、非モテが鳴くんだ。
あー俺、何やってんだ。
結局、アパートの扉の前まで、ダンボール箱ごと非モテを担いで来てた。
腰がいってしまいそうなほど、すんげえ重かった。
「今日だけだぞ。明日雨が降ってなかったら、元の場所に戻すんだからな」
そうつぶやきながら、ダンボール箱から非モテを取り出し、部屋に入れた。
うわ、キータッチ、テラスムーズ。一つ一つの増田に、細かく熱のこもったレス。
おい、それ、何かに生かせないのか?
ぐう、と非モテの腹がなる。そう言えば俺も何も食べてない。
翌日は雨だった。非モテを捨てに行くわけにもいかない。
パソコン事務のバイトがあったので、うちには余裕が無いからと説き伏せて非モテにバイトを申し込ませた。
使い捨てのT字カミソリで髭を剃らせると、非モテはなかなか整った顔立ちをしてる事に気づいた。
カットが終わった非モテを見てびびった。コイツ、何で非モテなんだ?
めちゃめちゃ男前だろ、これ。
来てもらって、服と靴を見つくろってもらった。
見つくろった服を試着した非モテを見て「このイケメン、どうしたの?」と驚く姉。
「捨て非モテだったから、拾ったんだよ」と俺が言ったら、嘘・・・と姉は絶句した。
バイトで必要かもしれないので数パターンの服の組み合わせを見つくろってもらった。
服代、4万8000円。カードで払った。って、何やってんだ?俺。
非モテと姉貴と三人で鍋食って帰った。メシ代は、さすがに姉貴に奢ってもらった。
「あのな、明日の昼からバイトだからな。早めに切り上げて寝ろよ。」
俺はソファで寝た。
翌日、ベッドで寝ている非モテを起こさないように会社へ行った。
帰ってくると、非モテはいなかった。
バイトに行ったのだろうか。
初バイトに行った非モテのために、奮発して焼肉弁当を買ってきたんだが。
夜10時過ぎても非モテは帰ってこない。
そう言えば、さっきサイレンの音がしてたけど、あれって事故か何かじゃね?
バイトで叱られて帰って来にくいとか。
もしかして俺んちが嫌になったのかな。
もう、帰ってこないのかな・・・
「ただいま」
突然玄関のドアが開いて、非モテが入ってきた。
そのままテーブルの俺の前に座り、一万円札5枚を俺に差し出した。
「何これ?」と聞く俺。
「服代とか。非処女とか」
「非処女は余計だろ。こんなにたくさんの金、どうしたんだよ」
「だから、ビッチは余計だよ。そんなもん、どこに持ってたんだよ」
「ダンボール箱の中」
それで・・・、あんなに重かったのか。
「ところで、バイトには行ったのか」
こくこく。うなずく非モテ。
「叱られなかったか」
こくこく。
「また行けそうか」
こくこく。
「そっか・・・。金はいいよ。なんか必要な時もあるだろうから、とっとけ。
逆に申し訳なかったな。そんな大事なもん売らせちゃって」
非モテの人にはかみつかれそうな話だけど非モテがかわいくてよかったよ。
非モテは正面から非モテの地位向上の理屈を重ねるより、こういうアプローチで世に訴えた方が好感もってもらえるよ。 かわいいなぁ非モテ。
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