2008-09-13

最近小学校で同級だった男の子の夢を見る。毎晩のように見る。

父が転勤族だったわたしは4年のときにその小学校に転入して、卒業と同時にまた遠くに引っ越した。

同窓会に参加したこともないし、中学から今に至るまではまったく接点はなかったんだけど、夢に出てくるものだからいろいろ思い出してしまって、こういうもやもやをどこに吐露すればいいものかわからないので今回初めて増田になってみた。叩かれるのはこわいので、誰にも見られずひっそりと落ちていってくれればいいと思う。

それはさておき、そいつはお金持ちの家の長男で、将来は父親の会社を継ぐことになっているといううわさだった。

毎年クラス替えのある小学校だったんだけど、そいつとは4年から6年までずっと同じクラスだった。

どこかひねたところのある子どもだった。

女の子同士の

「ねえ、今好きな人いる?」

という会話の遡上に上ることはなかったけど、頭が良く、スポーツも得意で、親譲りのものなのか人を惹きつけるオーラのようなものがあった。オーラって言うか、とにかく大物の風格を子どもなりに持っていたやつだったと思う。

5年のクラスで席が隣同士だった時期、内容は忘れたけど半分口げんかのような感じでいろんなことを言い合っていて、ふと

「なんだかこいつとは、夫婦みたいに何でもしゃべれるな」

と思ったのが強烈な記憶として残っている。

なぜ「夫婦」という単語がそこで出てきたのかはわからんけど、そいつと自分の間に、自分の両親が話しているときの雰囲気と似たものを感じ取ったからなのかもしれない。歯に衣着せぬ物言いで続く、間断のないことばのキャッチボール。劣勢になっても、他のやつみたいに「せんせーい、隣の人がうるさいです!」とかかっこ悪いことはしなかった。互いに相手と真正面から向かい合い、相手のことばを受け止めながら対話を続けていた。それに伴う緊迫感を、今思えばわたしはとても楽しんでいた。「手応えがある」って言ったらなんか偉そうだけど、そういう感触をぼんやりとそいつに抱いていたんだと思う。

はっきりとそいつを異性として意識したのは、小6のときだった。

国語の授業で「注目の的」という慣用句を習った。「班ごとに話し合って、これを使った短い文を作りなさい」と担任の先生に指示された。わたしたちは机をくっつけて「注目の的」を使ったうまい文を作るべく話し合った。そいつとは同じ班だった。

「的って言うとなんだか痛くて大変そうだね」とかアホなことをわたしが言っていたら、そいつがぼそっと小さな声でわたしに

「お前、クラスの注目の的じゃん。」

と言った。(わたしたちは「お前」「あんた」と呼び合っていた)

最初は意味がわからず、そいつがいつもとは違う様子でそっけなく言うものだから、わたしがクラス中に冷ややかな目で見られているような痛い子だと言いたいのだろうか、とか思って、信頼していたのはわたしだけだったのかなぁ、って気がして、なんだかさびしくなって黙り込んでしまった。

他の子が

「え?どういうこと?」

と聞き返すと

「注目の的って、魅力があって皆がいつも見てる、っていう意味なんでしょ。

 お前じゃん。」

と言って、あとは黙ってノートを取りはじめた。

班全体がしーんとした。

横の男子

「おおぅ…素敵ねぇ…」

とか、軽く冷やかすような声をあげた。

しかしそれでも空気は軽くならなかった。

わたしはそいつの真意を図ろうと、ちらちらとそいつの顔を盗み見た。

でもそいつはとうとうそれから一度も顔を上げず、班としての発表は他の子が考えた案で無難にまとまって終わった。

そもそも、わたしは別にクラス中の注目の的なんかではなかったと思う。

勉強ができて運動もできてリーダーシップもあって、っていう目立つ子は他にいたし、そういう子に比べたらわたしは平凡なほうだった。

でもわたしはそのとき、ものすごく「どきっ」とした。

それが自分でも意外で、どうしてわたしはこんなにどきどきしてるんだろう、とだいぶ考えた。

そして、たぶん、わたしはそいつに何かそういうのを期待してるんだ、というようなことが、うっすらと自覚できた。

でも相変わらず、女子同士の

「ねえ、好きな人いる?」

という会話の場で、わたしがそいつの名を挙げることはなかった。

何か、そういうところで軽々しくそいつの名前を出すことがいやだったのだ。

別に「好き」とか、そういうのとは違う、と思っていた。

「好き」っていうのは少女マンガみたく背景にお花を背負った感じでキラキラしていて、ロマンチックで、そんなのが「好き」だと思っていた。

あいつは、そういうんじゃないもん、と思っていた。

でも、他の女の子の口からそいつの名前が挙がらないかどうかを、いつもすごく気にしていた。

子供心に、あいつのいいところを知っているのはわたしだけだ、と思っていた。

皆あいつのことを、金持ち高慢ちきのいやなやつ、と思っているかもしれないけど、わたしだけは知ってるもん、わたしだけは、あいつのこと、わかってるもん、と思っていた。

幸い(?)わたしが知っている範囲では、そいつのことが好きだと言う女子はいなかった。

2学期後半から3学期にかけて、中学受験をする子たちの身辺が慌しくなり始めた。

わたしは父の転勤がほぼ確定していたため、転勤先の市立中学校に通うことになるだろう、と前もって親から聞かされていた。

そいつは受験組だった。進学塾にも通い始め、受験組どうしでどんどん仲良くなっていっているのが傍目にもよくわかった。

受験組の子がうらやましかった。

その中には前述の、本当の「注目の的」の女の子もいた。

やっぱり、わたしより、同じ目的を持った友達のほうが話も合うし、わかり合えるよなあ、そうだよなあ、と、思った。

あいつのことをわかってるのは、わたしだけだもん、そう思っていたのは、錯覚だったんだなあ、と思った。

そいつとまた前みたいに仲良くできるかもしれない、というそれだけの理由で中学受験を親に申し出てみたりもしたが却下された。

今考えると、めっちゃ好きやったんやん、と思う。

サイン帳」を配るシーズンになった。

女の子クラス替えとか卒業の前に友達に配り、プロフィールとともに趣味とかメッセージとかいろいろ書いてもらったものを綴じておく、あれだ。

わたしもクラスの人たちに一通り配った。

女子はもちろんのこと、男子も結構律儀に書いてくれてありがたいことだ、と思っていた。

もちろんそいつにも渡したのだが、そしたらなぜかそいつは半切れで

「書いてもいいけど、絶対に他のやつに見せるなよ!」

と言ってきた。

あまりの剣幕にビビッて

「う、うん、わかった…。」

と答えると再度

「本当に見せるなよ!約束だからな!絶対に見せるなよ!」

と念を押してきた。

何か知らないがその気迫にただならぬものを感じ、絶対に誰にも見せない、と約束すると、そいつは仏頂面のまま紙をランドセルに突っ込んで持って帰っていった。

それがそいつとの記憶の終わり。

結局、渡してくれなかったのだ。

別にそいつはわたしのことを何とも思っていなかったのかもしれないけど、わたしのほうは、たぶん、そいつのことが大好きでした。

子どもにしてはしゃがれた声も、ひねたとこも、自分では嫌だといっていた長めのまつげも、女の子みたいな丸っこい文字も、テレビ趣味が同じだったところも、たぶんすごく好きだったんだよ。

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