2008-06-27

ほんとに「蟹工船」って読まれてるの?

いろんな報道で売り上げが5倍だとか何だとか言われてるんだが、その割に話題にしている人間を全く見かけないのはどういうわけだ?

というか、ワーキングプアと呼ばれる連中にあの手の文学作品を読む時間精神的余裕があるとは思えんのだが。

Wikpediaの項目によると、読売新聞5/2付の記事がもっとも古いらしく、その3ヶ月前の朝日新聞には、売れているという記述は無いものの作者の小林多喜二を取り上げた記事存在している。

そして5月中旬から今に至るまで、他の新聞社メディアもこれに追随するように「蟹工船が売れている=ワーキングプア格差社会」の論調が見られるようになっているわけだが、その根幹になる「若者蟹工船流行中」という事象がちっとも体感できないので、どうも違和感を感じざるを得ないんだよな。

もし誰か知っているのなら、格差の底辺に居るような人達が、上記の5月以前に蟹工船を絶賛しているようなURIを教えて欲しいんだが…。

まあ、そういう人達ネットにすら繋げられないのかも知れんけど。

■■追加■■

http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20080502bk02.htm

プロレタリア文学を代表する小林多喜二(1903??1933)の「蟹工船(かにこうせん)・党生活者」(新潮文庫)が、今年に入って“古典”としては異例の2万7000部を増刷、例年の5倍の勢いで売れている。過酷な労働現場を描く昭和初期の名作が、「ワーキングプア」が社会問題となる平成若者を中心に読まれている。

2万7千部ねえ…。それって平成若者の何パーセントなんだろ…。

■■さらに追加■■

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-03-16/2008031614_02_0.html

青年トークで「蟹工船エッセーコンテストで大賞を受賞した山口さなえさん(26)は、不当解雇され労働組合も助けてくれなかった経験から「私たち世代が絶望にならざるを得ない構造を、現代の蟹工船として書きたかった」と発言。長く派遣で働いた同準大賞の狗又(いぬまた)ユミカさん(34)は「『蟹工船』に共感するプレカリアート(不安定労働者)を代表して言いたい。『私たちをもっといい船に乗せろ』」と叫びました。

まあ、自分の事をプレカリアートなんて名付けてる時点で色々と染まってる人だとは思うが。

赤旗Webサイトで「蟹工船」で検索をかけると、今年初頭(1??2月)頃に色々とプッシュしている様子が伺える(それ以前となると2005年2002年と散発的に取り上げられているだけ)。こんな記事があった。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-02-27/2008022701_03_0.html

デビュー作「一九二八年三月十五日」などで「貧困を生み出す社会のしくみに目を向け、これを打破する闘争を主題にしたところに多喜二の最初の大きな飛躍があった」と不破さん。とくに「当時の非正規の臨時工を描いた『蟹工船』がいま若者に読まれ、たたかいの力になっていることに多喜二が喜ぶだろう」と話すと、「ホーッ」と感嘆の声ももれました。

少なくともこの時点で、不破の脳内では若者蟹工船を読んでいるという事になっていたらしい。赤旗以外のそっち系も調べてみるかな。

■■もっと追加■■

記事の発端は、5/2の読売の記事だと思われるわけで、

今年に入って“古典”としては異例の2万7000部を増刷、例年の5倍の勢いで売れている

これが本当に記事にするような事象なのかどうかを検証すべきなのかも知れんね。特に近代文学なんて元の販売スケールが大きくないんだから、ちょっとした事で数倍に跳ね上がったり数分の一に激減したりというのも珍しくないような気がするし。

2万7千部なんて、どこかの大手書店の営業がプッシュするとか、どこかの活動家講演会で取り上げたりする程度で軽く到達できそうな数字に見える。あるある大辞典納豆が売り場から瞬殺されるようなご時世だしな。

それに元の記事では「5倍のペースで売れている」としか書かれてないのに、いつの間にか購入者の大半が若者だという事になってしまっているのも気になる。購入者のプロファイルをどうやって知ったんだろ。中高年をメディアで煽ってちょっと騙くらかすだけでも数万部は軽くいけると思うんだが。赤旗日曜版だって100万部いってるんだし。

  • こういう記事が出てから、店頭に平積みされるようになったからさらに売れるだろうねえ。 しかし、ヒットの原因が格差社会やワーキングプアの問題なんだろうかってのは俺も気になる...

    • (だからこそ、ブームが気に入らない人間は陰謀論にとりつかれるんだろうな) 近所のしょぼい地方本屋ですら平積みされていたけど、陰謀だけで本屋の目立つ所に陳列して貰えると...

    • 陰謀論きましたよ。 それなのになぜ、フィクションにすぎない『蟹工船』だけが取りあげられるのだろうか。書店に大量に平積みされているのを眺めていると、資本の論理によって嗅覚...

  • 各書店の「蟹工船」フェアの気合の入れようはガチだね。 知り合いもブームに押されてか漫画版なら読んだようだ。特別感銘を受けたようでも労働問題に関心を持った風でもなかったけ...

    • イェーリング の「権利のための闘争」もいいぞ。 権利は与えられるものではなく、自ら闘って手に入れるものだ。 「闘う」ことを知らなければ、こき使われるだけに終わってしまう。

      • http://anond.hatelabo.jp/20080627210200 まあ「お前は闘わなければならない」と言われて鵜呑みにするような要領の悪い奴は 運動の要領良い指導者様にいいように利用されて、タダで新聞配達する...

        • まあ「お前は闘わなければならない」と言われて鵜呑みにするような要領の悪い奴は 要領良い指導者様にいいように利用されて、タダで新聞配達するのがオチだがな。 そうして「要領...

    • 資本論なんか現実には何の役にも立たないでしょ。 労働法関連の本でも読んどくのが現実的。

  • 書くのめんどくせーと思ったけど、誰も書かないので。 元増田は勘違いしている(なぜか断言) 今、ここにある「蟹工船」 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-01-21/2008012110_01_0.html ソースが赤...

    • リンク先の赤旗記事、最後まで読んでしまったけど 「お悩みHUNTER」のコーナー、色んな意味ですごいな。

      • 奨学金返済に仕送り 全く貯金できません  Q 奨学金の返済や家への仕送りで、毎月やりくりが大変です。月収は手取りで約15万円。貯金なんか全然できません。友人は、みんな同...

        • 書記長「お悩みをハンティングするだけで、相談に乗ってやるとは一言も言ってないのだよ」

          • ・・・言われてみれば。 誰かが悩みを言ったときに、それに対応するコメントが必ずしも悩み相談の回答とは限らないわな。 確かにそれは固定観念だったやもしれん。

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