2007-02-16

紳士トイレ

「我は紳士専用トイレなり。汝に問う。汝、ジェントルメンか? ならば証を見せよ!」

「ちんこ見せたら良いのか?」

紳士が、ちんこなどと言うか!バカモーン!」

突如、ドアが発光し、咄嗟に避けた俺が元いた場所を焦がした。何だ、このトイレ

「我は紳士専用トイレ。証を見せよ!」

再度、トイレ(正確にはトイレのドア)が吼える。

俺は信じられない気持ちで一杯だったが、尿意はのっぴきならないくらいに俺を急かしている。

「いいから、開けろよ!」

「証を見せよ!」

再び、ドア全体が発光した。ドアノブがパチパチいっている。

「あぶねえな!」

「証を! ジェントルマンたる証を!」

ドアの分際で、偉そうに発音しやがる。

「なら、お前がまず紳士トイレである証を見せろ!」

「な、なんだと」

紳士は、紳士と認めた人間の言う事を聞く。貴様紳士でないにしても、紳士に準ずる存在であるなら、俺も言う事を聞いてやる」

ドアは押し黙る。早く答えやがれ。俺は限界だ。

「我は、何をすればよい……」

よし、折れた。

「そうだな。俗に言うちんこを、紳士言葉で言ってみろ」

「むむむ……それは、ち、とぅ、トゥインクル」

「んなもんあるかぁー!」

トイレが考え込み電撃の消えたドアを、おもいっきり蹴りあけて、中に入る。トイレトイレトイレ。そこで俺は驚愕する。

「ば、ばかな」

その空間には何もなかった。白いタイルが壁と床を規則正しく埋め尽くしている。

「くくく。紳士に非なるものよ……。紳士たるもの、公衆の便前で、局部をさらすなどもっての外……。家まで我慢するのが紳士の一分。故にこのトイレは、トイレという概念でしかない。ははは。残念だったな」

愉悦するトイレの声を聞きながら、俺は既にある決意を固めていた。

俺の尿意が排水溝から流さていく。流れきらない尿が床を濡らしたが、誰も入れないし、誰も困らないだろう。

出るとき、紳士トイレが泣いてて、ちょっと悪い気がした。

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